第446話

朝から面倒な目にあってしまったな。気を取り直して岩を加工しよう。

現在の基礎の高さは地表から四メイル。これを十五メイルまで嵩上げするのだ。一体どれほどの重量になるのやら、想像もつかない。


基礎の上面は直方体の岩が、いくつも不規則に並べられている状態。ここにパズルのように岩を積み上げていく。特に角は大きい岩を使い頑丈に仕上げる必要がある。確か算木積みだったかな? 岩の向きを変えて積んでいけばいいはずだ。


まずは水斬、水鋸で岩を切る。我ながら便利な魔法を開発したものだ。水鋸を二つ並べれば完全に同じサイズに切ることだって出来るし、四つ併用して四角形を作れば底面だけは合同な直方体が作り放題だ。消費魔力と制御が大変だが、便利さには変えられない。


こうして岩のロスは大きいが全く同じ形、そして同じ大きさの直方体を大量に作ることに成功した。これならば並べるのがさぞかし楽だろう。こうして二日がかりで石切を終えた。組み上げるのはまた来週だな。




ケルニャの日の昼食は、少し豪勢にトビクラーの肉を大放出。まだまだたくさんあるしね。今回はコーちゃんは楽園に残るらしいのでみんなでワイワイ食べるとしよう。

それにしてもコーちゃんもカムイもミスリル板からよく直接食べられるものだ。うちの子達は器用だよなぁ。


じゃあ二人ともお留守番を頼んだよ。行ってくるね。

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


人じゃないけど二匹なんて呼びたくないんだよなぁ。


放課後まではまだまだ時間があるから久しぶりにタティーシャ村に寄ってみようかな。ホウアワビやサカエニナが食べたい。




到着。ここは変わらないなー。クタナツもだけど。

ツウォーさんちに行ってみる。いるかなー。


「こんにちはー。ツウォーさんいますかー?」


「はーい。どなた?」


「ああ、奥さんお久しぶりです。カースです。ツウォーさんにまた潜って欲しくて来ました。」


「あらあらまあまあ大きくなって! 主人は子供達を連れて海に行ってるわ。釣りと泳ぎを教えてるの。」


「ありがとうございます。行ってみますね。」


この世界では基本的に子供が海で泳ぐなんてことはしないはずだが……漁村では違うのか? それともツウォーさん一家が違うのか?

あ、いたいた。


「おーいツウォーさーん!」


「お、おお! お前か! いい時に来てくれたな!」


浅瀬で泳いでいた。そこなら魔物もそこまで危険ではないってことか。


「どうも。お久しぶりです。またお願いできますか? いい時とは?」


「それだ。今ガキどもに泳ぎを教えてたんだがな。潜りも教えたかったんだ。お前がいたら安心して潜れるからな。」


いつもの漁場にむかう。ミスリルボードを大きくしてあるので、五人乗っても広々だ。

なおロープは長男コウラに任せる。確か九歳だったかな。



開始から三十分。

「引き上げて!」

魔物が来る。まだ見えてはいないが私の範囲警戒に引っかかった。ロープによって水面まで引き上げたら、後は私の『浮身』にてボードの上に乗せる。


「ここまでですね。帰りましょうか。」


子供達は残念そうだ。ボードに乗ってるのが楽しそうだったもんな。

こんな短時間でも二袋はある。さすがの腕前だ。


「いつもありがとうございます。」


「なに、安全に潜って大金が稼げるんだ。こんな旨い話はないってもんだ。だから子供達にも泳ぎを教えてるのさ。」


三十分潜って一年分の生活費が稼げるんならそりゃあいい儲けかも知れないな。今回は金貨一枚と銀貨四枚を払った。


「じゃあ僕は沖で釣りをしてきますね。釣れたらまた解体をお願いできますか。」


「おお、いいとも。さっきの浅瀬で泳いでいるからよ。持って来るといい。」


放課後まであまり時間がないからな。一匹釣ったら終わりにしよう。大物が来ないかなー。



ざっと沖合二キロル地点までやってきた。ロープに釣り針も自前で用意してある。


『水球』

『氷霰』


そして久々の出番だ鉄スノボ。これにロープを括り付け宙に浮かせる。

後は待ちだ。氷霰は継続して使っているが。




おっ、引いてる!

ゆっくりと鉄スノボを回転させてロープを巻き取る。結構引きが強いぞ!

見えた! 『落雷』そのまま吊り上げて収納。さあて解体してもらおう。ツウォーさーん!




「ほほぉランスマグロか。やるじゃないか。」


それはカジキのような長い刃を持ったマグロだった。刃ってよりは槍に近い形状なのでランスマグロなのだろう。


「身はいらないから槍を貰っていいか? こいつが意外と高く売れるもんでな。」


「いいですよ。と言うか身以外なら全部いいですよ。」


「いつもながら剛毅な坊ちゃんだ。ありがたく貰っとくぜ。」


槍なんか食えないもんな。旨いものが最優先に決まってる。




さて、領都に向かおう。いかん、放課後に遅れそうだ。早めに発信の魔法を使っておこう。この魔法は距離の三乗に比例するかのように魔力を消費する。クタナツからも使えなくはないが、無駄遣いも甚だしい。今は速度に魔力を使わなければ。

結局、発信を使ったのはホユミチカと領都の中間あたりだった。

遅れる! とだけ伝えた。後三十分もかからない! 待っててくれアレク!

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