第423話
貴族学校は主に下級貴族や上級貴族の下位クラスが役人や官僚を目指して通う学校である。
二年生の終わり頃、セルジュ・ド・ミシャロンは首席の座に着いた。彼は上位を目指してハードに努力するタイプではない。自分の将来に必要なことを淡々とこなしているだけだ。
サンドラ、スティードとクタナツで大きな家に住む。そのために必要だと思えることを日々コツコツと積み上げている。
多少友人もでき、それなりに楽しく過ごしている。平日はやはり忙しく過ごしているが、週末は友人達と街をぶらついたり買い物したりすることも多い。
そして今日、とあるデメテの日。たまには少し贅沢なランチでもと友人達と街を歩いていた。そこで彼はある友人に関する噂を耳にする。
「アレクサンドリーネ様と言えばクタナツご出身だよね。セルジュ君も知ってるんだよね?」
「うん。友達だよ。それがどうかした?」
「聞いてない? 明日の話。領都一子供武闘会だっけ? アレクサンドリーネ様が賞品になってるよ。」
「えっ!? 何それ!?」
セルジュは事情を聞いて激昂した。どう考えても悪名高い辺境伯の三男がアレクサンドリーネを無理矢理賞品にしたとしか思えないからだ。
「ごめん! 僕用事ができた!」
そう言い残すと領都の中心部、貴族街の方に走っていってしまった。友人達は行き先を見て不安に思ったが、まさか辺境伯家に殴り込むわけでもあるまいと考え後は追わなかった。もしかしてセルジュの想い人が彼女なのかと考えはしたようだ。
セルジュが向かったのは貴族街の一角、辺境伯邸には劣るがそれでも豪邸、カース宅であった。
勝手知ったるカース宅。門を入り、玄関を入り「カース君! いる!?」
「あらあらいらっしゃいませセルジュ様。坊ちゃんはお嬢様とお出かけになりましたよ。夕方までにはお帰りになるそうです。」
「マーリンさん! カース君は武闘会のことを知ってるんですか!? アレックスちゃんが賞品になってるんですって!?」
「えぇえぇご存知ですよ。ダミアン様がおっしゃるには坊ちゃんの発案らしいですよ。お嬢様に寄り付く虫を減らすためだそうです。」
「あ、あぁー。」
セルジュは不思議と納得できてしまった。なぜカースのためにダミアンが動くのか、アレクサンドリーネが自分の身を賭けるのか。カースのやることならば納得できてしまう。
「あはは、じゃあセルジュが来たとだけ伝えてください。明日は応援に行きますね。もちろんカース君は参加するんですよね?」
「はい、そうみたいですよ。伝えておきますね。」
この後、マーリンは同じ話をスティードにもすることになる。彼女の雇用主はよい友人に恵まれているようだ。
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