第412話
アレクを取り巻く三人の冒険者。大人の時間を教えてあげると言う割には三人とも十代後半ぐらいだろう。アレクに魔法を教えられるほどの腕なのか?
「お兄さん達って凄腕なんですね! すごいなぁ! 僕に見本を見せてもらえませんか?」
「あぁ、何だこいつ? 帰っていいよー」
「そうそう、俺達は凄腕だからさ。早く帰らないと危ないよー?」
「俺達の魔法は危険だからな。見本なんて見せられないね?」
「それは残念、じゃあアレク。帰ろうか、いやー残念だね。」
「ええ、帰りましょう。」
そうやっていつも通り私の腕に腕を絡ませる。
「待てや! 何アレクサンドリーネちゃんを連れて帰ろうとしてんだ!」
「一人で帰れよ! アレクサンドリーネちゃんは俺らと飯に行くんだよ!」
「夜道は危ないよ? 無事に『麻痺』帰れ……」
帰れと言ったり待てと言ったり、どうしろってんだ。そのまま止まってろ。ついでに『微毒』
微毒だけなら吐いたり気分が悪くなる程度で済むが、麻痺とセットだとどうなるのだろう? 吐きたくても吐けない苦しみを味わうことになるのでは?
やはりと言うか、この程度の魔法が容易く効いたってことは魔力の低い雑魚だったということだ。ばかめ。
「ところで、あいつらのこと知ってる?」
「うーん、顔は見覚えがあるわ。断っても断ってもしつこい男が多くて。名前までは分からないわね。」
うーん、これは本格的な対策が必要なのでは? 非常に気は進まないが、名を上げる必要があるのか? うーん、どうしよう。
その後はいつも通り。自宅に帰って入浴、今日は一緒に入ってくれた! しかもいつもより甘えるかのように全身で私にしがみついてきた。当たってるよ? 当ててんのよ! と言わんばかりだ。湯浴み着を厚くするべきか。
「この前注文してた服が出来たよ。これを貰ってくれる?」
「ありがとう。この間の……うわぁー手触りがいいのね! これは変わったデザインね……まるで奴隷の貫頭衣みたい……」
「これはね、ワンピースって言うんだよ。シャツとスカートが一繋ぎになっていることから古来よりそう呼ばれているんだよ。ドレスもそうだけどね。」
「ワンピース……いい響きね。あれ? カースのは短くない?」
「ああ、僕のはTシャツって言うんだよ。統一王朝時代よりさらに昔、西側諸国で使われていたという文字を元にしたシャツなんだよ。」
「へえー、ティーシャツね。奴隷の貫頭衣とさほど変わらないのにオシャレに見えるわ。」
「寝間着として使うのがおススメだよ。一着はうちに置いて、もう一着を寮に持って帰るといいかな。」
「いつもありがとう。貰ってばかりで何を返していいのか見当もつかないわ。大好き……」
私はアレクが喜んでくれたらそれでいいんだ。ケイダスコットンの着心地は最高だしな。きっとよく眠れるに違いない。
「そういえば今日はコーちゃんは?」
「ノワールフォレストの森にいるよ。あ、そうだ。あそこなんだけど、『楽園』って呼ぶことにしたよ。いちいちノワールフォレストの森の南端部のちょい東なんて言うのも面倒だからね、名前を付けてみた。」
「へぇー、『エデン』ね。何とも神話的な響きね。カースにしてはセンスいいわ。」
ははは、褒められた。
「でね、この前の召喚魔法で呼んだ狼とコーちゃんが友達になってさ。一緒に遊ぶみたいであっちに残ってるんだよ。」
「倒れたのは召喚魔法が理由だったわよね。珍しいこともあるものね。本当に心配したんだから。」
「あはは、ごめんよ。じゃあ今日はアレクがいっぱい甘えていいからね!」
この後アレクサンドリーネ女王様にめちゃくちゃご奉仕した。
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