第411話

母上手ずからの昼食を食べた私は領都へと向かう。今日の放課後はアレクに会える、楽しみだ。


領都に到着すると、まずはベイツメントに向かう。頼んでいた服が出来ている頃なのだ。


「こんにちはー。」


「いらっしゃいませ。マーティン様、出来ております。」


ふふふ。何と言う手触りの良さ。そして羽のように軽い。魔石もしっかり渡してあるので、防汚、汗排出、温度自動調節など各種機能も付けてある。買うなら一着金貨二、三百枚はするだろう。


「いい感じですね。またお願いすると思います。ありがとうございました。」


「マーティン様はお召し物に並々ならぬ拘りがお有りのようで。職人共々楽しみにお待ちしております。」


次はもっと贅沢なパンツと靴下を作ってみようかな。

やはり肌に密着する下着は絹より綿か。

これらはいくつあってもいい。


放課後まではもう一時間ぐらいあるだろう。たまには一人でコーヒーでも飲むとしよう。


のんびりコーヒーを飲んでいたら美人のお姉さん二人から声をかけられた。雰囲気はナンパだったが、こんな子供相手にナンパとは思えない。楽しくお喋りするだけにとどめておいたが、何か目的があったのだろうか?



そして放課後、校門前でアレクを待つ。


五分も待たないうちに走って出てきた。息を弾ませて……可愛らしいなぁ。


「お待たせ! 会いたかったわ!」


「待ってないよ。僕も会いたかった。」


「じゃあ行きましょうか。」


そうして腕と腕を絡ませて歩く。今日は取り巻きがいなかったようだが?


「今日は男の子達に囲まれてないね? それはそれで珍しいね。」


「もう! 囲まれる前に走って逃げたのよ! 大急ぎで来たんだから!」


「ふふっ、ありがとう。嬉しいよ。」


貴族らしからぬ行動だが、今更だな。




アレクの要望でギルドに寄ることになった。訓練場でこの前の稽古の続きを頼まれたのだ。練習熱心だな。嬉しくなってくる。夕食までは二時間と少しぐらい、軽くトレーニングするにはちょうど良さそうだ。


「この前ほど遠くを飛ばすわけにはいかないから、五メイル付近を高速で飛ばすね。」


「ええ、お願い!」


標的が近いと威力は増すが、アレク自身の反応が追いつかないことが多い。当たれば貫通するが、外すことが多かった。難しいものだ。一体どんなアドバイスをしたらいいんだ?

ちなみに外した氷弾は危ないので私が処理している。


「じゃあ標的を少し厚くして遅くするね。」


これなら当たるだろう。貫通してくれると尚いいのだが。


おっ、命中率が上がった!


「いいね! いい感じだよ! その調子!」


「何か分かってきた気がするわ。最後にカースに思いっきり撃ち込んでみるから防御してくれる?」


「いいよ! 好きに狙ってみて!」


おおー、アレクがやる気になっている! いい傾向だ。私だって負けないぞ。自動防御を厚めに張っておこう。


氷弾ひだん!』


氷のライフル弾だ。私の腹の前で止まっている。危なかった。自動防御に少しヒビが入っているではないか。目には見えないけど。


「お見事! 今のを連続して三発くらってたら防御が抜かれてたよ!」


「ありがとう。やっぱりまだまだね。あんなのを三発も、それも連続して撃つなんて無理だわ。今はね。」


そろそろ帰ろうとしていたらお約束の……


「アレクサンドリーネちゃん。魔法ならそんな弱っちい奴より俺が教えてあげるよ!」

「俺達の連携はここじゃあ評判なんだぜ?」

「学校で教えてくれないことも実戦だと為になるよ?」


「今から帰るので結構です。お疲れ様でした。」


「待ちなよぉ〜。いつも門限って言って帰るじゃないか。たまにはゆっくり飯でも行こうよ!」

「そうそう。大人の時間ってもんを教えてあげるよ?」

「勉強熱心だと聞いてるからさ、色々教えてあげようね?」


さて、どうしよう?

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