第409話

母上は居間で紅茶を飲みながら読書をしていた。そんな何気ない日常の所作に気品があるかないかが、貴族の格を左右するのだろうか。


「ただいまー。いいことを聞いてきたんだけど、また疑問ができちゃったよ。」


「おかえり。カースも飲む? で、何かしら?」


「うん飲む。召喚魔法って一度呼んだ魔物が死ぬまで次を呼べないんだよね?」


「そうよ。絶対じゃないけど、そうなってるわね。」


「それなんだよ。母上はクロちゃんだけじゃなくてネロちゃんも呼んでたよね? あれってどうしたことなの?」


「あら、いい所に気付いたわね。そうなの。私の召喚魔法は特殊なの。私以外には見たことはないわね。通常の召喚魔法の流れは……

一、呼ぶ

二、戦う

三、服従させる

四、契約する

五、好きな時に呼ぶ

こうなのよ。私が契約した相手はノワールフォレストの森中西部に縄張りを持つノワール狼達の族長、ロボちゃんなの。クロちゃんとネロちゃんはその子供ってわけ。」


さすが母上、そんなすごい魔物を従えてるのか。すごいな。で、それがどう関係するんだ?


「カースもそうだと思うけど、召喚した魔物の気持ちって伝わってくるわよね? 私にも契約から五年後だったかしら、ロボちゃんの気持ちが伝わってきてね。一家丸ごと契約してくれって頼まれたの。そんなことができるとも思わなかったけど、魔力ポーション片手にやってみたら、できてしまったってわけなの。」


すごいな……魔物の方から頼まれるのか。やはり母上はすごいんだな! つまり複数の召喚獣を呼ぶには、魔物からお願いされなければ不可能なんだな。勉強になった。



昼食後は久々に道場に行き、日暮れまでみっちりと稽古に励んだ。アッカーマン先生にはラスティネイルボアの肉を渡しておいた。肉の方は食べてないが、きっと美味しいと思う。


そして自宅に帰って久々の夕食。父上と会うのもかなり久しぶりだ。白い狼、カムイの件で褒められてしまった。嬉しいぜ!


夕食後はキアラに風呂で本を読んであげることになった。こいつはいつまで私と風呂に入るつもりなんだろう。何も考えてなさそうだ。ちなみに本日キアラのリクエストは『ハ・ガクレ』難しい本だ。


『騎士道というは死ぬ事と見付たり。毎朝毎夕、改めては死に死に。常住死身に成りて居る時は、武道に自由を得、一生落度なく家職をしおおすべきなり』


一体どうしたキアラ? どこからこんな本を……やはりこの子は天才か?


ちなみに体を洗うのは私がやったが、実はオディ兄の洗濯魔法、乾燥魔法はすでにマスターしているらしい。よってタオルもあまり使わなくなったようだ。じわじわと追いつかれている気がする……




ちなみに今日はトールの日。明日の放課後までに領都に行けばいい。今夜は久々に自室で寝れる。いつ帰っても部屋がきれいなのはありがたいなぁ。嬉しい。

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