第403話 召喚魔法

再び楽園に舞い戻った私は早速召喚魔法を試してみる。詠唱が長いのでまずは練習をしておこう。それからだ……


「ホントに詠唱が長いな。まあいけるか。よし!」


『ゴクジューア クニンユー イショーブツ ガーヤクザー イヒーセッチ ボンノーウ ショーゲーン スイフケーン 天と地の遍く存在よ 我は求め訴えるなり カース・ド・マーティンの名において願い奉る 出でよ召喚されし魔の物よ』


ぐおっ! 魔力がグングン減っていく! 首輪を外しておけばよかったか!? ヤバい! もう魔力が無くなる! いくら何でも減りすぎだ!


目の前にはモクモクと白煙が上がっている。意識が朦朧と……話が違う……

コーちゃんが私の首に巻きついて何か助けようとしてくれている……


そして目の前には、白い狼がお座りをしていた。





「ガウガウ!」


うるせーよ!


「ガウガウガウ!」


うるせーって! 眠いんだよ!


「ガウガウガウガウ!」


くそ、頭が痛い、何だよこいつ……魔力が枯渇している……一体何年ぶりだ? 私の魔力が空になるなんて……


「白い狼か……くそ、綺麗な毛並みしやがって! あー頭が痛い!」


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」


おおっ! 狼の体にコーちゃんが絡みついている! すごく仲が良い雰囲気だ! ジャレてるのか? 楽しそうだなー。




しまった! どうやって帰したらいいんだ? もう魔力がないんだぞ! 「ピュイピュイ」


え? 魔力はもういらない?


「ピュイピュイピュイ!」


ん? 召喚じゃなくて具現化した? 何それ?


「ガウガウ!」


僕らは友達? だからもう魔力はいらない?

何それ? なら全魔力を持っていくんじゃねーよ! ばか! 苦しいんだよ!


時間がヤバい! アレクの放課後に間に合わない……

でも魔力が空っぽだ……だから魔力ポーションも取り出せない……何回このミスをやるんだ私は!


少しでも回復すれば取り出せるのに、先ほどから全然回復しない……

汚銀のブレスレットも何の足しにもならない……

くそ……頭が……


だめか……








ケルニャの日。この日の放課後はカースが領都に来る予定だ。アレクサンドリーネは一日千秋の思いでこの時を待っていた。しかしおかしい、カースから発信の魔法が届いてこないのだ。


ついに放課後になっても彼女が発信の魔法を受け取ることはなかった……


二週間前は、カースが機転を利かせて自分を助けてくれた。ならば自分はどうやってカースを助ければよいのか……


不可能だ。


ただの遅刻ならそれでいい。しかしカースに限ってそれは有り得ない。アレクサンドリーネ以外にカースが優先することなどないとお互いが知っている。


アレクサンドリーネは日暮れまで北の城門でカースを待っていた。そしてとうとうカースは来なかった。仕方なくカースの自宅に移動しマーリンに事情を説明した。そして普段通り過ごしていた。


入浴し、マーリンと差し向かいで夕食をとる。カースの惚気のろけを話したりしてみる。


その後、広いベッドに一人で寝た。アレクサンドリーネに出来ることは待つことだけだったのだ。罪深い男である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る