第385話
昼まではまだ時間があるのでギルドに顔を出してみよう。今の時間って人が少ないんだよなー。
そう思っていたら意外と多い。さっさと仕事に行けばいいのに。無駄話してんじゃねーよ。
「マジだってよ?」
「おお、ハイネルンの連中が見たらしいぜ?」
「マジかよ! ヤバイな!」
「だからって魔王はねぇだろ?」
「じゃあ誰があんな馬鹿でかい岩を動かせるってんだ?」
「おはようございます。何の話ですか? もしかしてノワールフォレストの森、南端部のちょい東ですか?」
「おお、オメーか。しばらく見てなかったな。そうよ、そこだよ。何か知ってんのか?」
「いやー、知ってはいるんですけど……巨岩が二キロル四方に並んでるって話ですよね?」
「いや、確か……そうらしいぜ。詳しいじゃねーか。」
「しかも入口がなくて登るか飛ぶ以外に入る方法がないんですよね?」
「おお、岩だから高さはあるが登るのは簡単だったらしいぜ。」
なるほど、二週間ちょい前か。コンクリ仕上げをする前に見られたか。そりゃまあ、いつか発見されるよな。
「四隅に特大の巨岩が置いてありますけど、そこに刻まれた紋章は見られたようですか?」
「いや、聞いてないぜ。西側の真ん中辺りから登ったらしいからよ。」
「うーん、そうですか。じゃあもしそこに行かれることがあったら北東と北西の巨岩に彫られた紋章を見るといいですよ。」
「えらい詳しいじゃねーか。教えろよ。」
「もうしばらく内緒です。ただ平日は入らない方がいいですよ。週末なら入っても大丈夫です。もちろん魔王はいません。」
ふーむ。侵入者対策ってどうすればいいんだ? 私がいない間に入られるのはいいけど、ゴミとか捨てられてたらブチ切れそうだ。
領有権も気になるし、やはり困った時は母上に相談だな。
カースが帰った後のギルドでは……
「よお、あいつだよな? スパラッシュさんが可愛がってたガキ」
「おおカースだろ。坊ちゃん坊ちゃんって呼んでたよな」
「何であんなガキが?」
「ありゃ魔女のガキだぞ。オディロンに擦り付けをやったパーティーが灰も残らず草原ごと焼き尽くされた噂ぐらい知ってんだろ」
「おお、つまり魔女のコネか?」
「いや、どっちかっつーとオヤジのコネじゃねーか? あそこのオヤジとスパラッシュさんは仲が良かったからよぉ」
「すっきりしねーなぁ。オディロンはいいさ。奴隷女に金貨百枚出して結婚するたぁ剛毅なもんだ! あいつはその弟だろ?」
「弟だな。それがどうした?」
「スパラッシュさんの最後の仕事、あいつと一緒だったらしいじゃねーか! どうしてだよ!」
「知るかよ。今頃何言ってんだ?」
「あのガキの顔を見たら思い出しただけだ!」
「それよりよぉ、さっきの情報どう思う?」
「あ? 紋章がどうとか、平日がどうとかってやつか?」
「それよ。俺ぁ今すげー馬鹿なことを考えてるぜ。カースがそれを知ってる理由をな」
「何だよ、言えよ」
「馬鹿らし過ぎて言えねー。あいつが言わなかった理由が分かったかも知んねーけど。それだけに馬鹿らし過ぎて言えねー」
カースは未だにクタナツ最年少冒険者だ。しかしそれなりに付き合いはあるので絡まれることはまずない。カースを知らない年上の新人や他所者なら話は別かも知れない。
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