第342話
クタナツでは戦争の準備が始まっていた。ただし攻める方ではなく守る方だ。サヌミチアニへの援軍も取り止めた。もっとも威力偵察程度の役割だったらしく、中止にしても全く問題はないようだ。
「騎士長、辺境伯は攻めてくると思うか?」
「来ないでしょうな。あまりにも得るものがありませんからな。」
「ふっ、そうだな。今頃頭を抱えているか、それとも行動を起こしているか……」
「いずれにしましても防衛体制は整えておきませんとな。」
翌日、クタナツ中に事の次第が発表された。
『クタナツの少女を手に入れんとした辺境伯三男、六男。その魔の手から少女を守り抜きクタナツまで連れ帰った少年あり。これらはクタナツに対する敵対行為であり、宣戦布告に等しい。よって厳戒体制へと移行する。
クタナツ以外の出身者は速やかに取り調べを受けること。この一ヶ月の間にクタナツを一週間以上留守にした者も同様。』
このような内容で、街中を騎士が歩き回っている。件の少女と少年については公開されていない。しかしどのような身分であれクタナツの民に無法を働いたのだ。それに対する代官の強硬なまでに同胞を守る姿勢はクタナツの民を熱狂させた。官民一体となって防衛に励むことだろう。
一方ギルドでは。
「戦争じゃあ!! テメーら分かってんな!? カチ合った
組合長が一人で燃えていた。
「ホントに来んのかぁ〜?」
「相手は領都の腰抜けどもだろ〜?」
「まあ来たらやればいいんじゃん?」
「こっちから行こうぜ!」
「領都までか? やなこった」
「うるせーんじゃあ脳なしども! ワシが行けって言ったら行け! それまでは好きにしとけ!」
城門の出入りが厳しくなったことに冒険者達は不満を覚えていた。その反面どこかで組合長の一声を心待ちにしている者もいた。
そしてカースは、道場にてアッカーマンに事情を話していた。フェルナンドはすでにいない。またどこかに旅立ってしまったのだろう。
「ふむ。
「押忍!」
「しかし……王都の貴族も盆暗じゃったが、領都も負けておらんのう。」
「そうなんですか?」
「どいつもこいつも自分が望めば叶って当たり前だと信じておる。度し難い奴らよ。この国も長くないのかも知れぬのぅ。」
王国の歴史は三百年。徳川幕府が二百六十年。黒船でも来るのか? さすがに無理だろうな。
ならば再び戦乱の時代? こっちはありそうだな。クタナツの独立がきっかけで各地で貴族領が独立。群雄割拠の戦国時代が始まる……
すごくありそう。魔王も嫌だが戦乱もイヤだな。
「王族が立派な方々なだけに差が目立って仕方ないわい……」
王族か……前にアレクも言ってたような。それでも貴族の横暴は止まらないのか……
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