第322話

抱き合ったままどのぐらいの時間が経ったのだろうか。このお湯は冷めないし、なぜか湯当たりをすることもない。いつまでも入っていたくなる。ガンガン魔力は減っているが回復もしている。大きく作ったことで回復効果も大きくなったのだろう。


「そろそろ戻ろうか。最後に高度を上げてみるよ。どこまで遠くが見えるんだろうね。」


「東の国とか西のサヌミチアニとか見えるかしら。」


北のノルド海と東のオースター海は見えている。


「やっぱり世界は丸いんだね。」


「そうなのね……考えたこともなかったわ。東の国や南の大陸があるなら……その先もあるはずなのよね。一体どうなってるのかしら。」


「北の山岳地帯のさらに北も気になるよね。アレクが魔法学校を卒業したら長い旅に出てみようか。南の大陸や東の国、全部行ってみよう。それまでにもっと魔力を増やしてどこまでも行けるようになっておくから。」


「最高だわ。 私、本当にどこまでも付いて行くわ。頑張るから。魔法学校で誰にも負けないから!」


まるで卒業まで会わないかのように言ってしまった。そんなことは全然ないのに。でも思い付きにしてはいいアイデアだ。きっと楽しい旅になるだろう。絶対行こう。


「そろそろ降りようかな。あんまり高度を上げると苦しくなるからね。」


「うん。最高だったわ。いつもありがとう。」


『何用だ……』


今回も幻聴か? 早く降りよう。


「カース、今のって?」


「もしかしてアレクも聞こえたの?」


え!? 幻聴じゃない!?


『何用だと聞いている……』


聞こえる……マジか。何の魔力も感じないのに?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る