第314話

カースとハルバートが歩いて帰っている頃、道場では。


「さすがにクタナツのもんは強いのぉ。」


「ええ、若い上に素質がある者が多かったですね。」


「うちのカースだって中々だろ〜?」


「ふぉっふぉっふぉっ。この親馬鹿め。」


「カース君は迷いのない良い太刀筋でしたな。剣で大成するタイプではないですが、失敗することもなさそうです。」


「そりゃ仕方ないな。あいつ魔法は凄いからな。さてと、やるかジジイ?」


「おお、掛かってくるがいい。」


「では私は審判を。」


飲みに行くのかと思ったら稽古が始まった。

一対一だったり、一対一対一だったり。はたまた二対一だったり。

そんな剣術バカ達だった。


ちなみに『剣術で失敗する』とはいくつかある。

・己の腕を過信して決闘で死ぬ。

・己の腕を過信して調子に乗って事件を起こす。奴隷落ち。

・道場の経営に失敗して身売り、もしくは夜逃げ。

・道場破りに破られる。これは経営の失敗に含まれる。

などが挙げられる。



「ふぅ、アランよ。よく精進してしておるのぉ。だが、まだまだじゃ。ワシ程度に勝てんでどうする。ばかたれが。」


「うるせージジイ。また強くなりやがって! 俺が勝つまで生きとけばいいだろ。」


「そしてフェルナンドよ。何回聞かれても教えることなど無いわい。また強くなりおったな。目隠しでワシら二人に圧勝ではないか。」


「いや、まだまだですよ。自分の未熟さが嫌になります。」


「さすが兄貴。どこまでも強くなるんだろ? そろそろエルダーエボニーエントだって一撃じゃないか?」


「ふふっ、無茶言うな。まぁあれからいい剣も手に入れたからな。前回よりは善戦できそうだ。」


「さて、いい汗もかいた。今度こそ飲みに行くぞ。アラン、案内せい。」


こうしてカースの帰宅から遅れること二時間半、三人は夜の街に消えていった。どんな夜になるのだろうか。夜はまだ始まったばかりだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る