第286話

父上が分かる限りの真相を教えてくれた。通常なら家族であっても話すことなどないのだが、今回は私とアレクのお手柄だから遠慮なく聞けるのだ。


そもそもサンドラパパを娼館に行かせた男がいる。金庫番の騎士バンキッシュだ。この男も女と借金に雁字搦めにされており指示されるがままパパをハメたのだ。三回無料の娼館があるとか言ったらしい。

ボディチェックをスルーできたのもこいつがいたからだ。そりゃそうだ。スルーし放題じゃないか。魔封じの首輪すらしなくていいじゃないか。


パパが予定より早く実行したのはビビったからだとか。通常業務開始時だと代官府にも人がたくさんいるため、その中で犯行を行う度胸がなかったらしい。


そして北には案の定、刺客が待っていたらしい。執事服の男ごと始末する予定だったとか。その上で金を回収するまでが任務だとか。そいつが東に向かったのは意外にもサンドラちゃんの意見を取り入れたからだそうだ。話を聞くうちに北に直進するのは危ないと考えたらしい。タティーシャ村など行くはずもなかったようだ。


私達があれこれ考察した中に『第三者がいる』ことがすっぽり抜けていたため、的外れなことを考えてしまっていたようだ。それでも結果的に見つかったのだからよしとしよう。


ちなみに刺客は毎度お馴染み暗殺ギルドの殺し屋達。例によって何の証拠も持っていない。前回とは別口の暗殺ギルドなのだろうか。強行軍で弱っていたところを執事服の男と共謀して皆殺し。その後執事服の男を一人殺すだけなのだから最低ランクでも十分だったことだろう。


さて、今回の一件で汚職に手を染めた騎士が一定数いることが判明した。全員が全員とも露骨な悪事を働いていたわけではないのだが、互いにお目溢しする程度には汚れていたのだ。


従って騎士全員を尋問魔法にかけて全ての膿を洗い出すこととなった。その結果、任務中の立ち小便から道で拾った小銭をポッケないないまで、全員の小さな罪が暴かれる結果となった。


父上の関所破りはなぜか暴かれず、代わりに仕事をサボっていたことがバレた。

こうした今回の件に関係なさそうな罪には寛大な処置で終わったが、金庫番のように重大な罪には一切の酌量が認められなかった。やはり奴隷役で草原の開拓に従事することとなった。鉱山送りでないだけマシかも知れない。このような罰を受けたのは十人もいない。他は減俸で終わりである。


肝心の金貨五万枚だが、執事服の男が自分の魔力庫とマジックバッグに入れていた。そのため全て取り返すことができたらしい。しかしまだ問題が残っている。


金貸しが見つかっていないのだ。自称『鴉金からすがねのシンバリー』一日一割の超高利貸しらしい。高過ぎだろ……

どうやら執事服の男とは別人らしい。

そして当然ながらクタナツにそのような名前の金貸しなんていない。

いつかの蟻事件の時の偽勇者野郎に今回の金貸し野郎、毎回一人こんな不審人物がいるんだよな。怪しい。

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