第254話

アレクを送り届けた後、自宅に帰った私は家族と話をしている。今夜は父上も帰ってきていた。オディ兄はいない。


「と言うわけで、今も魔力庫には五人の死体が入ってるよ。どこか魔境で丸焼きにしたらいいよね?」


「ああ、それでいい。人質を取った相手への対処もそれでいい。さすがカースだ。」


「辺境伯の三男、四男の放蕩ぶりは聞いていたけど、まさかそこまでとはね。アレックスちゃんに傷でも付けてたら、クタナツが独立しかねないわよね。」


「そこまでなんだね。まあアレクは何も知らないし無傷だから大丈夫とは思うけど。」


「ああ、よくやった。それでこそ男だ。」


その後、『消音』の魔法を教えてもらった。これは便利だ。部屋の内外で音を遮断したり、自分の足音や衣摺れの音も消すことができる。敵が部屋に入って来るまで分からないと言う欠点はあるが。




今更だが辺境、特にクタナツにおいて悪人の命は軽い。城壁外ではあっさり殺されるし、城壁内でも即奴隷となりやすい。それもあって子供が決闘で人を殺したとしても何も言われない。むしろ褒められ、喜ばれる。勝ったことを、そして生き残ってくれたことを。


特に人質を取るような相手に容赦してしまっては我が身が危険だ。人質ごと殺したとしても何の咎もないだろう。


ファンタジーあるあるとしては、容易く人を殺す我が子を殴ってでも矯正しようとしたり、他の村人は恐れて距離を置いたりするが、ここではそんなことはないようだ。改めて思うが真面目な人間にはそれなりに生きやすい土地なのだろう。


ふと気になったが、こんなペースで絡まれて他の人はどうしてるんだ?

絡まれて模擬戦をやることになってしまったら騎士団だって手の出しようがないだろう。魔境でのなすり付けなんかまさにそうだ。城壁外のことだもんな。


真面目に生きてるだけではだめなのか……中世は世知辛いな。つくづく私は幸運なようだ。これからもサボらず頑張ろう。


しかしピンチになると容易く首輪を外してしまうのは如何いかがなものか……

でも外さずに死んでしまうのも困る……難しいな……

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