第225話

帰り道、クタナツとタティーシャ村の中間辺りの森の上空に差し掛かった。ここで何か獲物を狙ってみよう。

草原や平原、山などで狩りをしたことはあるが、森ではない。

いつかノワールフォレストの森に行くための練習だ。


一旦降りて誰もいないことを確認。

そして再び上空に戻り、

『火球』

『火球』

『火球』


半径十メイル程度を灰にして空白地帯を作る。延焼しそうになったら水球で消火だ。


四十分ぐらいで全て燃え尽きて森にぽっかりと穴が空いたように見える。

まだ多少燻っているが虫対策に丁度いい。さあ大物は来るかな? それとも火だから来ないかな?


もちろん上空も警戒しているし隠形も使っている。どこからでも来やがれ。


来た!

北からすごい勢いで何かが飛んでくる!

でかい!

恐ろしいので、さらに上空へ逃げよう。


トビクラー!?

すごい勢いでまだ燻っている空白地帯に飛び込んだ! 泥田で遊ぶ猪のように灰や炭の上でぬたうち回っている。

確か火と血が好きって話だったか。


では今のうちにトドメと行こう。

ゴロゴロしてやがるから頭が狙いにくい。

ならば最近出番の減った鉄ボードで……


『金操』


首に向けてギロチンだ。

鉄ボードは厚さ三センチ程度の鉄板なので、ギロチンのような斬れ味はない。首を圧し潰すイメージだ。

避けるなよぉ。


命中!


ぬたうち回るのに夢中で気付きもしなかったようだ。首がグチャっと切断された。切り口は汚いがまあいいだろう。


動かなくなるのを待ってサッと近付きサッと収納。鉄ボードが少し曲がってしまったか。

コカトリスは美味かったから、きっとこいつも美味いのだろう。


今からクタナツのギルドに解体をお願いしたら明日のキアラの誕生日には十分間に合いそうだ。






ギルドにて。

「お疲れ様でーす。」


私は新人なので挨拶は欠かさない。


「解体と魔石の買取をお願いできますか?

魔石はこれ、解体はトビクラーです。」


「変わった魔石ですね。何のですか?」


「シーオークですね。」


「珍しい物を出してくれますね。トビクラーは解体倉庫に出してくださいね。一緒に行きましょう。」




やはりこの倉庫は涼しいな。

トビクラーを魔力庫から出す。やはり大きい。尻尾から頭まで十三メイル、両翼の幅は十五メイルぐらいか。食べる所はあるのか?


「トビクラーの素材は何か使えますか?」


「色々使えますよ。まず胴体の皮ですがコートにするのが一般的です。少々の炎ではビクともしません。ドラゴンのブレスにも一度なら耐えられるらしいですよ。それから飛膜で服を作るのもオススメです。防刃効果がありますよ。後は爪、歯、目、骨などいくらでもありますが解体の間にこれを読んでみてください。」


そう言って職員は辞書のような物を渡してきた。


「ありがとうございます。時間はどれぐらいかかりそうですか?」


「今は係員の手が空いてますので一時間もかからないと思いますよ。買取はどうします?」


「胴体の皮と飛膜は持って帰ります。肉はどうですか? 美味しい部位はありますか?」


「そうですね、オススメはやはり内臓ですね。見たところ新鮮ですのでどこも美味しく食べられるでしょう。それから腕、胸の肉ですね。よく動かす部位は美味しいみたいですよ。」


「なるほど、ではそこ以外を買取でお願いします。」


「分かりました。それなら金貨二十から三十五枚ぐらいになると思います。お待ちになりますか?」


「ええ、見学しながら待たせてもらいます。」


解体の勉強をしようと思ったのだが、係員の手際が良すぎて全然分からない。流れるように次々と解体されていく。

質問するのも悪いので見てるだけだ。

せめて辞書と見比べながら部位の確認だけはやってみる。やはりこのような大物は無駄な部位がないらしい。


解体が終わりに近づく頃、先程の職員がやってきた。


「買取価格は金貨二十八枚です。内訳はシーオークの魔石が金貨七枚、トビクラーの魔石が金貨九枚、残りの素材が金貨十二枚です。」


これはすごい。一匹丸ごと納品したら一体いくらになるんだ?


「それでお願いします。全額カードへ入金で。素材は持って帰ります。」


いやーキアラのためと思ったが、いい稼ぎになった。現在の私のカード残高は金貨五十枚を軽く超えている。

子供には大金すぎるが金貸しの金庫にはこれぐらいないとな。

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