第220話
放課後、珍しくサンドラちゃんが来て欲しいと言うので馬車に同乗した。
着いた先はタエ・アンティだった。
「今日は私の奢りね。でもコーヒーはだめよ。」
「じゃあホットミルクにしようかな。で、何事だい?」
「大したことじゃないわ。バレてしまったようだからきちんと伝えておこうと思っただけ。個人魔法をね。」
「あら、やっぱり持ってるんだ。なら聞かせてもらおうかな。」
「嘘が分かるのは本当。でも悪意のない嘘限定なの。」
「よく分からないね。例えばどんな感じ?」
「カース君の話って下らない嘘が多いじゃない? 冗談とも言うけど。あれなんか全然悪意がないわよね。だからすぐ嘘って分かってしまうの。面白いから嘘って指摘する気もないわよ。」
面白いのか下らないのかどっちだ?
「うーん、分かるような分からないような。
じゃあ、算数だけど教えることがまだまだたくさんあるんだよね。」
「嘘ね。教えることはありそうだけど、たくさんはないのね。残念だわ。」
正確にバレてる。この一年教えたらもう教えることがない。
「サンドラちゃんはアレクと同じぐらい可愛いね。」
「嘘ね。可愛いって言ってくれたのは嬉しいけど、アレックスちゃんと同じぐらいが嘘ね。」
「やっぱり正確なんだね。悪意のある嘘は見抜けないのが惜しいね。」
「まあ個人魔法だしね。そんなものよね。はっきり分かるようになったのも最近だし、それに勝手に嘘を判定して魔力を消費するのよ。相手によっては全く反応しなかったりするし。」
やはり個人魔法は役に立たないと言われるだけあるな。
「でも何でわざわざ言ったの? 黙ってれば分からないのに。」
「カース君はダメねぇ。女が聞いて欲しいって言ってるんだから黙って聞いてればいいのよ。」
おお? 淑女レベルが上がってる?
しかしこれは淑女と言うより……悪女?
本当に九歳か?
どいつもこいつも……子供らしさを忘れないで欲しいものだ。
「ところで、この話は僕達だけの秘密?」
「カース君はどうしたいの?」
「どうしたいってことはないよ。わざわざバラす必要なんてないし。せいぜいアレクに言うぐらいかな。」
「やっぱりカース君はダメねぇ。こんな時に他の女の話をするなんて。じゃあ私達だけの秘密よ。誰にも言わないでね。」
「分かった。秘密ね。」
おかしいな。
こんな妖艶な九歳がいるか?
どこの悪女だ。
「今日はありがとう。お礼にカース君の秘密も黙っててあげるね。」
「それは助かる。じゃあ帰りは歩くからいいよ。やっぱり馬車は嫌だわ。また明日ね。」
私の秘密って何だ?
肛門魔法を知られたら生きていけないぞ?
これは悪女のテクニックと見た。気にしなーい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます