第169話

今日はテストの結果発表だ。


国語

一位、サンドラちゃん

二位、私

三位、エルネスト君


算数

一位、サンドラちゃん

二位、私

三位、アレク


魔法

一位、私

二位、アレク

三位、エルネスト君


社会

一位、サンドラちゃん

二位、アレク

三位、エルネスト君


体育

一位、スティード君

二位、私

三位、グランツ君


総合

一位、サンドラちゃん

二位、私

三位、エルネスト君


まあ順当なところだろう。

算数でサンドラちゃんに負けたのは悔しいが、うっかりミスをしてしまったので文句も言えない。

ちなみに彼女は、国語・算数・社会が満点だった。そりゃあ勝てない。

また、アレクが魔法でエルネスト君を上回ったのが印象的だった。彼女は彼女で頑張っているのだろう。


「テストも終わったことだし、放課後みんなでお茶していかない?」


アレクにしては珍しい提案だ。


サンドラちゃんも……

「たまにはそんなのもいいわよね。どこか知ってる?」


「待った! 僕お金ないよ。」

「僕も! この前剣を買ってもらったから当分お小遣いがないんだ。」


セルジュ君とスティード君だ。

剣を買ってもらう話は本当だったのか。


「問題ないわ。今日だけは私の奢りだから。明日から春休みだし、今日ぐらい楽しくいきましょう!」


「ありがとー!」

「それなら喜んで!」


私が奢ってもよかったが、それならアレクに甘えよう。


「二番街のタエ・アンティにしましょうよ。この前行って気に入ってしまったの。今日から珍しいメニューを出すらしいし。」


ここぞとばかりにサンドラちゃんが突っ込む。

「へぇー、この前ねぇー? 誰と行ったのかしらねぇー?」


アレクは顔を真っ赤にしている。

反応が早い、そしてかわいい。助けてあげよう。


「僕と行ったんだよ。残念ながら二人っきりじゃなかったけど。」


アレクの中では護衛は人数に数えないのだろうか。ファロスさんを忘れてはいけない。


「はいはい、分かってるわよ。聞いた私が余計だったわね。じゃあお店に集合ね。」


そうしてみんなは馬車に乗り込む。

私はマリーに先に帰るよう伝えて一人で店まで走る。私が一番乗りだな。


今更だが私達はバランスのよい五人組だと思う。小さい時からの付き合いであるセルジュ君、サンドラちゃん、スティード君。

最上級貴族なのに鼻にかけず真っ当に付き合ってくれるアレク。

後一年でバラバラになってしまうのが悲しいが、卒業してもたまには集まりたいものだ。

桜咲く、クタナツ塾の校庭で。




ちなみに新メニューとは、何とコーヒーだった。一杯金貨二枚という恐ろしい値段。

南の大陸からの舶来物らしい。よくこんな辺境で仕入れられたものだ。

奢りだから容赦なく頼もうかとも思ったが、一応アレクの懐具合を確認してからだろうな。

平民二人の一年分の食費が一杯のコーヒー……

前世でA5ランクの牛肉を食べたことがないように、ブルーマウンテンなどの高級コーヒーも飲んだことはない。

だからこそ興味を惹かれる。早くみんな来ないかなー。


席に着いて待っていると、偶然冒険者の先輩がいた。きれいなお姉さんことエロイーズさんと、ごっついお姉さんことゴモリエールさんだ。二人とも二十三歳らしい。

それでもキャリア八年の六等星、やり手だ。


「おやカースじゃないか。あんたもこんな店に来る年になったのねぇ。どうだい? この後私の宿に来るかい?」


エロイーズさんは艶めかしい表情で話しかけてくる。すごく行きたい。


「僕はここの自称常連ですよ。すごく行きたいんですが、友達を待ってるんです。みんなは馬車なもんだから僕だけ先に着いたって訳で。」


「そいつは残念ねぇ、今夜ならゴモリと二人で可愛がってあげたのに。今夜のおかずは誰にしようかねぇ。」


そう言ってお二人は店から出ていった。

あのお二人に可愛がってもらえる男がいるなんて! チクショー、何だかとってもチクショー!

いいんだ、私はアレク一筋だから。


タイミングよくみんなが到着した。

こうなったら奢りなんだからコーヒーを頼んでやる!

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