第155話
散歩デートも後半戦だ。
現在クタナツ城壁の北東部だ。
ここで事件が起こった。
あいつは!
見るからに落ちぶれた風貌のスコットが、同様に落ちぶれた風貌の人間数人を連れて私達の後ろから現れた。
北の城門で私を見咎めて後をつけて来たのだろう。こんな見通しのいい場所で尾行もないものだ。
誰か来てると思ったらこいつか。
「おーガキぃ! いい身分じゃねぇかよ。こっちはお前のせいでこの様だぜ! どうしてくれんだ?あ?」
「いい所で会いましたね。お知らせがありますよ。貴方の借金ですが減ってます。今なら金貨五枚でお釣りが出ますよ。」
ちなみにファロスさんは私達とスコットの間に立っている。もちろんファロスさんはすでに剣を抜いている。
「ガキぃ! 護衛がいるからって調子に乗んなよ! 助けて欲しけりゃ金出せや!」
こいつは何言ってんだ?
高々六人で勝ったつもりなのか?
「ファロスさん、お聞きしたいのですが、この場合って殺しても罪に問われませんよね?」
「あ、あぁもちろんだ。こいつら剣は抜いてないが恐喝しやがったからな。」
「うるせーんだよ! さっさと金出せや!」
使う魔法はもちろん乾燥。
スコット以外を殺しておこう。
「アレックスちゃん、あれは何だろう?」
一応、余所見をしておいてもらおう。
「余裕かましてんじゃねーぞ! おうテメーら、やっちまうぞ!」
そう言って剣を抜くスコット、しかし誰も動かない。そりゃそうだ。
「ファロスさん、こいつって奴隷で売れますよね。いくらぐらいしそうですか?」
「お、おお金貨十枚ぐらいかな。」
「なるほど。お前はもう客じゃない。身売りして金を払ってもらうぜ。取り敢えず寝てろ。」
そう言って私は木刀を取り出してスコットと相対する。しかしこいつ前回自分の足を刺しておいて気付いてないのか?
「舐めんなガキぃ!」
そう言って私に向かって来るが……
ファロスさんに腕を斬り飛ばされた。
バカな奴。
倒れて何か唸ってやがる。
「ありがとうございます。助かりました。この場合って買取値は下がりますかね?」
「すまんな、たぶん金貨一枚かな……」
マジかよ。安っ!
母上に頼めば治してくれそうだが、こんな奴を母上の前に連れて行きたくない。
もういいや。
「よかったなスコット。もう借金の心配しなくていいからな。」
面倒になったので乾燥魔法で殺しておいた。
もう何人殺したか忘れてしまった、自分が怖い。
「ありがとうございました。この死体はどうするべきですか?」
「放っておいていいよ。後で通報しておくから。」
「ありがとうございます。よろしかったらファロスさん、戦利品を取られては? 少し先に行ってますので。」
魔力庫の中身をぶちまけているが、どうせゴミだろ。
「そうだな。見える範囲にいてくれよ。」
「じゃあアレックスちゃん行こうか。」
「やっぱりカースは強いじゃない! 何で大会に出ないのよ!」
「あーそれはね。興味がないってこともあるけど、馬車で遠くに行きたくないからだよ。」
「バカ! 何なのよ! こんなに強いのに!」
「ねえアレックスちゃん。秋の大会に剣鬼様が出てきたらどう思う?」
「何よそれ? 誰も勝てるわけないじゃない! そんなの誰も参加しないわよ!」
「僕もそう思うよ。自分で言うのも変だけど僕と他の子達にはそのぐらい差があると思うよ? まあ剣鬼様がどれぐらい強いかすら僕には分からないけど。」
「カース……」
「この際だから言うけど、アレックスちゃん。僕のことが好きなんだよね。僕も君が好きだよ。」
「カース!」
「あーあ、言っちゃったよ。上級貴族と関わりたくなかったのに。君があまりにも可愛いから。どうしてくれるの?」
「カ、カース……//」
「君の父上には、アレックスとの将来は認められないって言われてるよ。理由はさっきのあれ。僕は金貸しをやるんだ。名門アレクサンドル家の令嬢を金貸し風情に渡せないってことと、どうせ短命ってことの二つの理由だと思うよ。」
「カース!?」
「さあどうする?」
言ってしまった。
中身はオッさんなのに、まるで精神年齢が逆行しているかのようだ。
まさかこんな小さい子供に重めの愛の告白をするなんて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます