第147話
週末、一人で鉄板を探しに行く話をしてたらオディ兄が途中まで一緒に行ってくれることになった。
両親からはグリードグラス草原に行かないなら一人でもよいと許可をもらってある。
下っ端らしくメンバーには挨拶しておく。
「どうも、弟のカースです。途中までお世話になります。」
「どーもヒャクータです。」
「ジェームスだよ。」
「久しぶりね。この前はありがとう。本当にありがとう。」
「あんまり覚えてませんが無事でよかったですよね。途中まで楽しく行きましょう。」
だいたいの場所はフェルナンド先生から聞いてあるので途中までは迷うことはない。
昼過ぎには着くだろう。
本日オディ兄達『リトルウィング』はグリードグラス草原南端で仕事をするらしい。
戻りは四日後とか。
オディ兄の右腕が見つからなかった原因だが、植物の生態に関係しているらしい。
あの草原の植物は夜、眠ったように動かない。羽を畳んだかのような姿なのだ。
つまり上から見ると昼間は緑だらけでロクに見えないが夜なら地面がはっきり見える。
だから夜に探したことですぐ見つけることができたのだ。
腐らないのは当然としても、蟻以外に狙われなかったのは幸運以外の何物でもない。
オディ兄の人徳に違いない。
昼ご飯は私が用意した。
ギルドで買っただけだが私の魔力庫は冷めないし腐らないから便利だ。
昼ご飯を終え私達は進む。
そろそろ目標の地点だ。
まあまあの大きさだ、すぐ見つかるとは思うのでみんなとお別れだ。
「どうもありがとうございました。お気をつけて。オディ兄頑張ってね!」
私は鉄スノボに乗り辺りを探し回る。
ここはグリードグラス草原ほど草は繁ってないのですぐ見つかると思ったのだが、これが意外と見つからない。
軽く土に埋もれている可能性もある。
ならば表面の土をぶっ飛ばせばいい。
辺りに人影もない。
『
全方位に向けて発射する。これならきっと見つかるはずだ。
ゲホゲホ、やはり砂埃がひどい。
『高波』
水壁程度の水量を全方位に送り出す。
津波よりかなり水量が少なく済むお手軽な水撒きだ。
ふう、これで埃も落ち着いた。
おっ、見つけた!
やはり近くだったのか。
おおっ!錆びてない!
鏡面は傷だらけだが全然錆びてない!
ただの鉄のはずなのに。これはただ幸運って訳ではないのだろう。気になる。
まあいい、帰りはこれに乗ってゆったり帰ろう。帰ったらまた磨いてやるからな。
上から適当にゴブリンやコボルトでも刈ろう。
そこでふと思い付いた。
以前両親とピクニックに行った時、父上は大物が出ないうちに帰ろうと言っていた。
強力な魔法を使うとそれに惹かれて大物が来るのか? これは気になる。
こんなクタナツに近いエリアにも来るのだろうか?
実験してみるしかないな。
『火球』
『火球』
『火球』
魔力はたっぷり込めてある。
鉄をも溶かす火球を三連発。
地面が一部溶岩と化している。
そして私は上空から高みの見物だ。
時々火球を追加してみる。
待つこと三十分。
何も来ない。
やはりここではだめか。
曇ってきたことだし、早く帰ろう。
少し移動しただけでもう晴れてきた。
大きい雲でもあったのか? 見上げてみると、魔物がいた。
何だこれは? 私より上空を飛び、しかも大きいぞ!?
大物が来るって空からの場合もあるのか。
これはドラゴン? ワイバーン? 顔は鶏っぽくもあるが大きすぎだろ!
全長七、八メイルぐらいか。
どうやら私には気付いてないようだ。隠形を使っててよかった。魔物にも有効なのか。
それなら先制攻撃だ。
私は新たに風を起こさないよう金操のみで鉄板を操作し魔物の上方に移動する。
魔物は地面に降りようとしている。
『
こんな近くなのに魔力の無駄使いかも知れないが、大きいから怖いのだ。
確実に一撃で殺さないと……
普段より大きめの弾丸、仮に徹甲弾と名付けよう。それで脳天を一撃。
貫けなくても衝撃で即死だろう、と考えていたら……貫けた!
頭部に直径十センチほどの穴が空いている。
魔物は地面に落ち、横たわる。
死んでるとは思うが、油断はできない。
遠くから石を二、三個当ててみる。
大丈夫だよな?
サッと近付きサッと収納。
やはり大物は収納するのにも魔力を食うな。
実験は成功。
これを魔境でやったらどんな大物が来るのか、楽しみなような怖いような。
もう用はない。早く帰ろう。
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