第148話

クタナツには城壁東側まで飛んで帰り、そこから北の城門まで歩く。

ここからだと三キロルはあるが仕方ない。


ギルドに到着。

さてどうしたらいいか……


「こんにちは。依頼は受けてないんですが大きい魔物を倒したので、素材の買取をお願いできますか? 解体してませんが。」


「いいですよ。どこにありますか?」


「魔力庫に入れております。大きいんですがどこに出したらいいですか?」


「ここでいいですよ。出してください。」


「え、いや、大きいんですよ?」


「このテーブルより大きいとでも言うんですか? 早く出してください。」


信じてないパターンか。

困ったな。まあいいか。


ズシーンと受付前を埋め尽くす魔物の巨体。

室内だとやけに大きく見えるな。


テーブルや椅子は隅に弾き飛ばされたようだ。


「いくらですか?」


「へっ?」


「買取価格はいくらですか? 解体費用は一割ですよね。それを差し引いていくらになりそうでしょうか?」


「コ、コカトリス!? ど、毒が……」


毒? そんなのもあるのか。

じゃあ収納。


「大きいですよね。で、どこに置きますか?」


そこに他の冒険者が、

「何考えてんだ! こんな所でコカトリスを出すなんて危ねーだろうが!」


受付の男は放心状態で何も喋らない。


「お勤めご苦労様です先輩! おっしゃる通りだと思います。ですが、あの方にここで出せと言われたもので。申し訳ありませんでした!」


間髪入れず続ける。

「ちなみに僕、今日が初討伐なんですよ。初めての獲物がこれで幸運でした。これも先輩方のご指導のお陰です。ありがとうございました!」


そう言って私は頭を下げる。角度は六十度。


「お、おう。その調子でがんばれや。」


さすがクタナツ男。物分かりがいいし寛大だ。


「で、どこに置きますか? この質問十回ぐらいしたような気がしますね。」


魔境でバジリスクやコカトリスなんて珍しくないって聞いたが。

もしかして新人さんかな?


「あ、ああこちらです。」


ここは解体倉庫かな。少し涼しいようだ。


「こちらにお願いします。」


では排出。


「いくらぐらいになりますかね?

あっ、軟骨だけください。」


「金貨十〜十五枚ですね。見たところ頭しか傷がついておりませんし、新鮮殺したてのようですね。」


「私はどうしたらいいですか? 明日出直すとか?」


「現金で受け取りたいならそうですが、ギルドカードに入金でもいいですよ。」


これもファンタジーあるある。

ギルドカードが銀行のカードのように使えるのだ。説明の冊子には書いてあったが、確認しておこう。


「入金、出金の際に手数料はかかりませんよね? また税金は天引きですから基本的に私が出金する以外に残高が減ることはないですよね?」


「基本的にはそうですね。逆に残高がマイナスになりましたら月に一割の利息が付きますのでご注意ください。」


「マイナスになるケースは何がありますか?」


これも知ってるけど確認は大事だ。


「多いのが依頼の未達成ですね。期日の一週間前なら罰則なしでキャンセルできますよ。しかしそれ以後のキャンセル、または失敗で依頼料がそのまま罰金となります。

他にはケンカか何かによる器物破損。

先程のテーブルは……」


「あなたの指示でしたね。」


「そうですね。私の給料引きとなるでしょう……」


同情なんかしないぞ。

ギルドの職員は高給取り、これは最早常識。


「では明日の昼頃、軟骨を受け取りに来ますね。」


私はギルドを後にして自宅へと帰るのだった。

そろそろ夕方だし母上も心配しているだろう。帰ったらまず鉄板を磨こう。

こいつにもそろそろ名前が欲しいな、鉄キューブのように。

鉄ボード、鉄畳、鉄カーペット、鉄絨毯……

アイアンボード、アイアンカーペット、フライングスティールカーペット、メタルボード……


鉄ボードにしよう。

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