第2話 召喚
時間ときが止まったようなそんな気がした。
「いや、ベクトハルスって何!?しかも、救えっていわれてもなぁ…」
「急すぎるというのは承知しております。しかし、事態が事態ですので」
事態ってなんだろう、でもものすごく困ったような焦ったような顔してる。こういう時は何をいうべきなんだろう。咄嗟とっさに出た言葉はこれだった。
「いや、救うっていうのはいいんだけど、どうやってどうやって救うの?」
そう言うと彼女は途端に笑みを浮かべ、手を合わせて、「救っていただけるのですね!感謝します!説明はあとでしますので、まずは私の世界へ参りましょう」
と言った。
「どうやって…」と言う間もなく謎の少女ハンナは俺の手を掴み、そして言う。
「手、離さないでくださいね」
すると、少女ハンナの青い瞳が赤に変わり、彼女を中心に青い光が現れた。そしてその光は俺と少女ハンナを包み込んだ。
眩しさに思わず俺は目を閉じた。そして再び目を開けたとき、俺は息を呑んだ。
「俺の部屋じゃない…どこだ、ここ…」
俺の前に現れた景色、それは俺の知らない世界、本で読んだことがあるような中世の街並みだった。
「ここが私の世界、ベクトハルスです」
ふいに自分の足元を見る。すると、自分の部屋では履いていなかった靴が自分の足を包んでいる。
俺は混乱していた。混乱するしかなかった。
「ど、どうなってんだ!?!?!?」
と、叫びたい気持ちを抑えつつ、ハンナに尋ねる。
「き、来たのはいいけど、こ、これからどうするの?」
「とりあえず、私の家に行きましょうか。こっちです、ついて来てください。」
案内されるままについていった。
レストランらしき店の前を通り過ぎるとき、シェフ(?)が何かを調理していた。現実でも見る普通の光景だろう。_____左手の動作を除いては。なんということだろう、シェフの左手からはなんと炎が出ているではないか。
「あのー……ハンナ?」
「はい?何です?」
「さっきの君のもそうだけど、もしかしてさ、この世界ってさ、"魔法"とかあったりするの?」
するとハンナは当たり前のように答える。
「はい、ありますよ。」
やっぱりか…ならどうやって救うんだよ。拳ならまだ分からなくもないけど、魔法って。めんどくさいことな巻き込まれたな…どうしよう…
そんな心配がよぎった。
手を引かれるままに連れて行かれると、何だこれお城かってぐらいの建物が目の前に建っている。
「でっか…!何だこの建物、お城かなんかか?」
「これは私の家ですよ、翔太さん」
「家って…すげぇな…ってか『さん』付けはやめてくれよ、呼び捨てで構わないからさ」
「それはできません、あなたはこの世界の救世主なのですから。」
俺はハンナに疑問を投げかける。
「何で救世主なの?俺なんかすごい力でも持ってるの?」
当たり前の話だが、並外れな力を持っていない奴をわざわざこんな世界に連れてこようなんていうバカはいないだろう。つまり、このハンナという少女は俺にすごい力があると分かったから連れて来たはず。そういうことを考えながら、ハンナの返答に耳を傾ける。
「はい、もちろんです。翔太さんは魔力保有量がとても多いです。その量はこの世界の半分を滅ぼした魔王グラン・ハデスに匹敵するものです。その方ならきっと魔王を倒せると思って、ここに呼びました。」
魔王ってなんだ?世界を救ってと言われて、異世界まで連れて行かれて挙げ句の果てに救世主呼ばわり。もう意味が分からん!ラノベかよ!魔力保有量が異常とか、イ◯ス◯の望◯冬◯じゃねぇか!
ものすごい顔をしている僕にハンナが遠慮がちに
「と、とりあえず、家に入りませんか?中で詳しく話すので」と声をかけてくれた。
「あ、うん、入っていいのか?」
「はい」
「わ、わかった、それじゃあ…」
とりあえずさっきのことは今は置いておこう。
異世界といえど、女の子の家に入るのは初めてだ。(めちゃくちゃデカイけど)どんな感じなんだろう…
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