家出する時はちゃんと計画を立てよう(4)

「おいおい……なんでそんなことを聞いてくんだよ?」

「べ、別にいいだろ。答えろよ」


 クルトは顔を赤くしてそっぽを向く。


 あっ……ははーん。さてはコイツ片桐に惚れてるな。それで、俺達がどういう関係かを探ってる訳だ。


「別に俺らは何でもねぇーよ。ただの仕事仲間だ」


 俺がそう言うと、クルトは


「ふーん。そうなのか」


 と声のトーンを1つ上げて答えた。喜んでるの?


「ああ、そうだぞ。……つーかまだお前その格好だったのか。早く服着ろ? 嫌われちゃうぞ」

「……ホームズもその格好でよく言えるな」


 ……あはは。俺もパンイチ姿だったわ。


 俺は乾かしておいた服を着ることにした。それを見たクルトも服を着だした。


「……まだ濡れてんなぁ。まぁおねしょしたと思えばノーダメか」

「……は?」


 ───


 ……と、しばらくすると、片桐が沢山の人を引き連れて戻って来た。


「ただいまっすホムさん! 連れてきたっすよー」


 そこにいたのは。


「うわーすごいですねここ! 綺麗ですね! ルナルドも連れてきたかったなぁ……」


 ウキウキはしゃいでるエミリオと


「……うわー思ってたよりもあっついよー!」


 手をパタパタさせているメルと


「クックック……なんともノスタルジーな風景だねぇ」


 ……クソ仮面野郎のマルクがいた。


「おいクローバー。変なのがいるぞ。戻してこい」

「クックック。冗談キツイぞホームズよ」

「冗談じゃねぇから帰れ」

「フッ……断ろう」


 駄目だコイツ……


「なんでこいつを連れてきたんだよ……」

「いやぁ……なんか暇そうだったので……」


 連れてくるのはここじゃねぇだろ……刑務所に連れてけよ……


「まーまー、6人も集まったし早速ビーチバレーやるっすよ!」

「チームはどうするんだ?」

「グッパするっすー」


 グッパというのはみんなも一度はやったことのある、グーとパーで分かれるアレだ。


「よし、やるぞ!」


 6人は円になって腕を出す。


「せーの」


「グーとパーで分かれましょ」

「グッパしましょー」

「グッパージャス」

「グーとパーで合わせ」

「グッパでほい」

「チョキ出したらぶん殴る」






「……合わせろや!!!!!!」


 ───


「……えーっと、グーが俺と片桐とクルトだな」

「そっすねー。メルちゃんとエミリオさんとマルクさんがパーチームっす」


 何回かグッパをして、このようなチームとなった。なんかいつもと変わらない感じだな。


「よし、じゃあコートに入るっす」


 ビーチバレーコートは片桐が作ってくれた。ネットもしっかりとある結構本格的なやつだ。


 コートに入ると、エミリオが向こう側から話しかけてくる。


「クローバーさん! 15点先取でいいですか!」

「いいっすよー! じゃあ始めるっすよー!」

「はい!」

「いくっすよ! それっ!」


 片桐の弾丸のような強烈なサーブが相手コート目掛けて一直線に飛んでいく……


「えいっ!」


 エミリオはそのボールを上にあげる。


「ナイス!」


 メルはそのボールをトスして……


「喰らうがいい!」


 仮面野郎は驚異的なジャンプで空高く飛び上がり、コートギリギリの場所に強烈なスマッシュを打ち込んだ。


 当然誰も取れない。


「……つ、強い」


 クルトは口をこぼす。


「ま、まーまー次っす! 次!」

「ドンマイドンマイ」

「さっきのはホムさんが取るべきボールっすよ?」

「えっ」


 続けて片桐はサーブをするが……メルにボールを打ち上げられ、そしてクソ仮面野郎が


「破っ!!」


 ボールを俺の目の前に叩きつけた。


「おい! 仮面野郎!! 少しは手加減しろ!!」

「フッ……ホームズはそれで勝って嬉しいのか?」

「嬉しい!!」

「クックック……君がそう言うなら手を抜いても良いが……その2人はどう思うだろうか?」


 後ろを向くと、片桐とクルトは軽蔑するような目でこっちを見てきた。


「えぇ……ホムさんプライドってのは無いんすか」

「ホームズ。それはださい」

「……ごめん」


 ───


 数十分後。試合の点数は 0対14。勿論0が俺達のチームだ。


 何故こんな点差が開いてるのか。原因は俺だ。


 片桐は運動が出来るし、クルトも年齢相当の動きは出来ている。


 問題は超運動音痴の俺だ。ボールを打ち上げることはもちろん、触ることすら出来ない。そのため、あの仮面野郎は俺を集中的に狙ってくるのだ。


 片桐は必死な顔で俺に声をかける。


「ホムさん……! せめて……せめて1点は取りましょう!!」

「ああ……! がんばるけどさ……!」


 相手チームのサーブだ。マルクがボールを上げ……こちらのコートにボールが勢いよく飛んでくる。狙いはもちろん……俺。


 取れるのかっ……俺!! いや無理っ!!


「ホームズ目を開けっ!!」


 ──声が聞こえた。その声はクルトが発したものだった。


 そうか……俺目を開いてなかったのか。勇気を出して……落ち着いて目を開く。


 ……見える。見えるぞ。ボールが飛んでくるのが。


 俺は落下点に移動して、打ち上げる体勢をとる。


「来いやぁ!!」


 そのボールは俺の腕にぶち当たって……上へ打ち上がった。


「クルト君っ! 続けて!」


 片桐はそのボールをトスする。そのボールをクルトはジャンプして……


「でりゃぁああ!!!」


 スマッシュを決めた。相手は誰もとることは出来ずに、ボールは相手コートへ落下する。


 1対14。


「……やった!! やったぁ!! 決まったぞ!!」

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