ゲームが上手な奴は遊びに誘われやすい(4)

「クソゲーじゃねぇか!!」

「いや違うっすよ、ホムさんの引きが強かったんすよ! ていうか何でボク刺したんすか!!」


 俺達はゲームを終了して元の場所へ戻ってきた。俺が不意打ちで攻撃したので、片桐は少し怒り気味だ。


「いや……そういうゲームでしょ?」

「そんな卑怯な人とは思わなかったっすー」

「卑怯だろうが勝ちは勝ちだ」


 片桐はむーとほっぺたを膨らませている。


「そんなことよりエミリオの方だ。あれは流石に勝てそうにないな……」

「そ、そうですよね。やっぱり僕には……」


 どうにかしてあげたいのだが、血を見ただけで倒れるんじゃあなぁ……貧弱すぎるぜ。


 しかし今更別の方法は考えつかない。すごろく大会で優勝を狙うしか……しかし……


「じゃあ片桐。血を見ても大丈夫な魔法でもかけてやってくれ」

「そんなのあるわけないっす!ボクドラ〇もんじゃ

 ないんすから……」


 ……無いのか。……無いの?


「でもハイテンションにする魔法はありますよ! 」

「まぁ待て。それは最終手段だ」


 おかしくなられたら困るからな。


「ならばゲームの穴を突くぞ。どんなゲームにも穴はある。それを探して勝利する」

「穴を突くってなんかいやらしい言葉っすね」

「うっさい。クローバールールをもう一度教えてくれ」

「はいっす、えーとー」


 そう言って片桐は話し始める。


 勝利条件は生き残ることっす。反則をした場合退場となり、ゲームから離脱されるっす。


 サイコロを振ったら30秒以内に出した目の数分進む。相手のターン中はマスの中から出てはいけない。これを守らないと反則になる……


「ストップ。さっきのをもう一度」

「え? えーっと……穴を突くっていやらしい言葉っすね」

「いや戻りすぎ……さっきのだ!」

「相手のターンターン中はマスの中から出てはいけない」

「それ!」


 これだよこれ。このルールは欠陥だ。これを使えばエミリオも確実に優勝できる。


「これがどうかしましたか?」

「絶対に勝てる。大会当日を楽しみにしてるんだな」

「ええーそんなー教えてくださいよー」

「じゃあエミリオの大会参加申請やって来てくれ」

「分かったっす」


 そう言って片桐は家から飛び出した。


「あの……絶対勝てるって本当なんですか?」


 エミリオが俺に話しかけてくる。


「ああ。血を流さずに必ず勝てる。教えようか」

「は、はい!」

「それはだな…………」






 ───一週間後───


「……ホムさん本当にいいんっすか?」

「何がだ? 完璧だろう」

「確かに勝てるかも知れませんが……目的見失ってませんか?」

「どういうことだ? お、そろそろエミリオ出てくるぞ!スクリーンを見ろよ!」

「……」


 俺と片桐はエミリオが参加したすごろく大会へ観戦しに来ていた。エミリオは予選を勝ち抜き、見事決勝まで駒を進めていた。そして決勝の試合は特別に中継されるらしい。


「お、始まったぞ!」


 モニターにエミリオの姿が現れる。他にも3人隣に並んでいる。対戦者だろう。今はサイコロを振って順番を決めている。


 エミリオの数字は1。ほかの3人は2.4.6と数字を出した。


「お、最後だ。これはもしかして3人抜きくるか?」

「……」


 ゲーム開始。一番目は少年は5を出して棒を手に、二番目の髭の男は3を出してムチを手に、三番目の小柄な女は1を出して聖剣エクスカリバーを手にした。


 周りから歓声が上がる。


「うおー!!! エクスカリバーを引いた!!」

「これはあの嬢ちゃんの勝ちだな」

「すげー!!!」


 ふっ。そんなものを手にしてもウチのエミリオには勝てないんだよ。


「負けるなエミリオ!」

「……がんばれーっす」


 次はエミリオの番だ。出た目は6。


「行けぇ! エミリオ!」


 エミリオはスタート地点からクラウチングスタートの体勢になり、スタートダッシュを決めた。


 目の前にいる女を押してマスから出させ、スピードを落とさずに髭の男を投げて、最後に少年を蹴り飛ばしてマスから出させた。


 ……相手のターン中にマスから出たため3人の反則負けだ。


「うおー!!! やった!!」

「……」


 周りから歓声が上が……らなかった。


「え? セコい」

「何その勝ち方……」

「つまんねー!」


 ……え。え。え?


「……ホムさん優勝は出来ましたけど……人気者には絶対なれないっすこの勝ち方」

「……」


 周りからはブーイングが飛ぶ。


「……どうしようエミリオになんて言おう」

「知らないっす。土下座でもすればいいんじゃないっすか?」


 俺達がうーんうーんと考えていると、向こうから満面の笑みのエミリオがこっちにやって来て……



 ──次の日──

 エミリオの家


「ルナルド……この人がとても凄い魔法使いのクローバーさん。この人が天才名探偵のホームズさんだよ」

「……うっす」

「……よろしくっす」


 エミリオの弟であるルナルドは、俺達の顔を眺めて見てこう言った。


「ほんとうにお兄ちゃん友だちいたんだ!よかった! しんぱいしてたんだよー! 」


 泣いた。隣を見るとエミリオも泣いてた。片桐も泣いてるふりをしていた。


 本当にいい弟さんじゃないか。お兄ちゃんのことを思ってこんなこと聞いていたんだ。










「ねぇホムさん」

「なんだよ感動のシーンだろ黙っててよ」

「いや……すごろく大会出た意味あるんすか?」







「ねーよ」

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