学生の頃

中学生になった僕に、車好きの友達が出来た。

そいつの自動車に対する熱情は僕以上だった。


「俺、将来家なんかいらないぜ、全部自動車に金をかけるんだ。住むとこなんて無くたって、自動車に寝泊まりするさ、自分の好きな自動車持ってないなんて不幸中の不幸だからな!」


僕は住む場所は必要だとは思っていた。

でも、好きな自動車持ってないなんて、不幸中の不幸……その彼の言葉に共感できた。


彼の人生は今、きっと自動車と共にあるだろう。

まさか車中泊を繰り返しているとは思わないが……。



高校に進学して、新たな自動車好きの友達が出来た。


春のピクニック。

観光バスに揺られ、山の頂上へ。バスから降りた生徒は皆散らばり、思い思い景色を眺めたり、お弁当を食べたり、男女で仲良く会話するグループもあった。


僕と友人は、バスを降りた場所(駐車場)に留まっていた。


僕は綺麗な景色は大好きだ。女子と会話するのも大好きだ。

お弁当……嫌いなわけがない。


でも……

ブーーーオオオオン、ブオオオオーーーーーン。

峠を上ってくる自動車のエンジン音の方が好きだった。

「いい音だな!」

「86(ハチロク)じゃね……」

「ああ、レビンかトレノだな」

エンジンが同じカローラレビンとスプリンタートレノは、実際に見るまでどちらかは分からない。


赤と黒、ツートンカラーのカローラレビンだった。


『かっこいい』


僕と友人はピタリとエンジン音と車名を当てた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る