学生の頃
中学生になった僕に、車好きの友達が出来た。
そいつの自動車に対する熱情は僕以上だった。
「俺、将来家なんかいらないぜ、全部自動車に金をかけるんだ。住むとこなんて無くたって、自動車に寝泊まりするさ、自分の好きな自動車持ってないなんて不幸中の不幸だからな!」
僕は住む場所は必要だとは思っていた。
でも、好きな自動車持ってないなんて、不幸中の不幸……その彼の言葉に共感できた。
彼の人生は今、きっと自動車と共にあるだろう。
まさか車中泊を繰り返しているとは思わないが……。
*
高校に進学して、新たな自動車好きの友達が出来た。
春のピクニック。
観光バスに揺られ、山の頂上へ。バスから降りた生徒は皆散らばり、思い思い景色を眺めたり、お弁当を食べたり、男女で仲良く会話するグループもあった。
僕と友人は、バスを降りた場所(駐車場)に留まっていた。
僕は綺麗な景色は大好きだ。女子と会話するのも大好きだ。
お弁当……嫌いなわけがない。
でも……
ブーーーオオオオン、ブオオオオーーーーーン。
峠を上ってくる自動車のエンジン音の方が好きだった。
「いい音だな!」
「86(ハチロク)じゃね……」
「ああ、レビンかトレノだな」
エンジンが同じカローラレビンとスプリンタートレノは、実際に見るまでどちらかは分からない。
赤と黒、ツートンカラーのカローラレビンだった。
『かっこいい』
僕と友人はピタリとエンジン音と車名を当てた。
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