かわいい妹のかわいい友達に妹さんをくださいとか言われたんだが?

キンキ先輩

第1話 妹が友達を連れてきた

 秋の日の夕方、俺がいつものようにバイトから帰ってくると家の中にはいつもの倍の”かわいい”があった。まあ倍と言っても1人が2人になっただけの話なのだけれども。要するにそこには我が愛すべき家族であり、たったひとりのかわいい妹の小春こはる、高校1年生の野々村小春ののむらこはると、小春と同じ制服を着たこれまたかわいらしいお嬢さん(その娘は”お嬢さん”と呼ぶにふさわしい雰囲気を纏っていた)がいて、かわいらしくおしゃべりをしていた。小春がお友達(家に連れてくるぐらいなんだからきっと友達で正解だろう)を連れてくるなんて事は初めてで、しかもそのお友達がお嬢さんときたので、ご挨拶はするべきか、お茶とお菓子はもう出してあるか、出していないのならば早く出さなきゃ、和菓子がいいか洋菓子がいいか、しょっぱいものがいいか甘いものがいいか、なんてことを気にし過ぎた結果


「オっ、お嬢さん。ハジメマシテェ、おっおお茶ッしませんか?」


 なんて不審者がナンパをしているみたいな発言をしてしまった。だがお嬢さんはほんの少しだけ困った顔をした後すぐにニコッと、可愛らしく、それはそれは可愛らしく笑って、


「ええ。お茶にしましょう。」


 と言った。俺はこのかわいらしい顔と物腰でこのお嬢さんに惚れた。一目惚れというやつだ。それはそれとして俺たち3人は自己紹介がてらお茶にすることにした。

 麦茶を一杯飲んで落ち着いた後(無難に麦茶を出した、麦茶はすべてを解決してくれる。緊張さえも。)会話を切り出した。


「俺は野々村恭輔ののむらきょうすけです。高校2年です。お嬢さんは?」


「私はみやびと言います。高校1年です。妹さんとは仲良くさせてもらってます。」


みやびさんですか。お嬢さんによく似合ったお名前だ。」


 みやび、みやびか。名は体を表わすとはよく言ったもので、お嬢さんにふさわしい名前をしている。


「そんな、お嬢さんだなんて何回も。そんな呼び方よしてください。緊張してしまいます。みやびで結構です。」


 みやびさんは頬を赤くして言った。


「それではみやびさんと。みやびさん、」


 俺がそう言い終わらないうちに小春が口を挟んできた。


「ねえお兄ちゃん?みやびはあたしの同級生だよ?お兄ちゃんより年下だよ?なんで敬語なの?あ、もしかして色目使ってるの〜?」


 げ、ばれたか。


「ま、まさか、そんなわけ、ないだろ。い、いくらみやびさんがお綺麗でも、そ、そういうわけじゃ、ないんだって。」


「ほら、やっぱりそうなんじゃん。まあ確かに学年の男子もみーんなみやびにクギヅケだけど。でもみやびには好きな人いるんだよね〜」


 小春がそう言うとみやびさんは少し困った顔をして笑った。


「小春、そういうことは俺みたいな他人がいる前で話すもんじゃない。みやびさんも困るんじゃないか。」


「いいえ、お気になさらず。」


 みやびさんはそう言っていたずらに笑った。

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