プリンセス・ベルクチカ Proyekt0.5

富永浩史

第1話

 かつてのある日、日本のどこかの平原で。

 セーラー服の女子中学生が二人、お供に犬、そこまでは普通。しかし空に鷲は、あまり学生生活にそぐわない。あげくに、一人が座っているのは六畳間いっぱい位の、形は飛行機。ただし、コクピットはない。そもそも乗るには小さすぎる。

「よく、こんな場所があったわね」

 三つ編みに眼鏡のアルフィアが、感心したのか呆れたのかわからない調子で言った。

「摩耶さんによれば、超軽量機扱いにすれば、滑空場で飛ばせるらしいよ?」

 うろ覚えっぽいことを、金髪ショートのワーシャが答えた。

「それって、ここで乗るつもり?」

「たまには飛ばさないと、アクジョルにも悪いでしょ」

「……普通に無人機として飛ばすのはできないの?」

 架空の近過去の話なので、まだドローン規制はないのである。それ以前に、ワーシャには法律知識など、まだほとんどない。

「それは、これから社長やろうってのに、まずいでしょ」

「だから、進路調査には就職って書いちゃったあとなのに、結局、進学はしとけって身内に説教されてるよ」

「勉強する機会が転がってるのに、しない理由がわからないわ」

「大丈夫、いざとなったらスポーツ特待でどこでも行けるから」

「墜落はしないまでも、転落したら特待も五輪もだめになるわよ」「心配してくれてる?」

「殺す前に死なれたくないの。だから、進学先も揃えてくれないと。私はスポーツ強化校じゃなく、たくさん勉強できるほうに行きますからね」

「わかってるってば。離れるわけ、ないじゃない」

 ワーシャがアルフィアに顔を近づけたところを見計らったように、爆音が響いた。

「待ちきれないから、先に遊んでるよー!」

   

 合成音声と衝撃波を同時に響かせながら、別の、ミサイルのような機体が二人の前を打ち上げられていった。

「ジャックのやつぅ」

「ていうか、あれはどういう法律上の扱いになるの?」

「……気にしないほうがいいかも」

 二人は顔を見合わせて苦笑した。


    

 結局この日、ワーシャは自分が乗ることを控えたが、我慢が長続きするわけもなさそうだ。

「ベルクチカ・レスキュー・カンパニー」が海外での行動を始める、ほんのすこし前の、彼女たちにとってはありふれた一日。


                      (どこかに続く)

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プリンセス・ベルクチカ Proyekt0.5 富永浩史 @H_Tominaga

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