第499話 補助魔法使い達、ナナシキへと戻る
「やっぱり、自分達の街は落ち着きますね」
翌日、僕たちはエルジェ様とナイジェル様に別れを告げ、ナナシキへと戻ってきました。
「これから忙しくなるだろうけどね」
「そうですね。ですが、結果的にはいい方向に向かったと思うの」
「色々と課題はありますけどね」
思い返せば、エルフの国で僕たちがやれた事はほとんどありませんでした。
しかし、エルジェ様とナイジェル様が仲直りというか、お互いの本心を話合えたことは、不安は残りますが大きな前進と言えると思います。
公には出来ませんが、ナナシキとの交流をしていく事が決まりましたからね。
「では、私達は領主の館へと向かいますね」
「きっと、仕事が沢山溜まっているんだろうなぁ……」
「今日の所は確認だけをして、明日から順番に終わらせていくしかありませんよ」
大変そうですね。
スノーさん達は仕事の為に領主の館へと向かっていきました。
「なーなー、私達はどうするんだー?」
「そうですね。僕たちもチヨリさんのお店に行きましょうか」
「そうだなー。営業は終わってるだろうけど、やる事はあるだろうからなー」
僕たちがナナシキへと戻ってきたのはお昼過ぎなので、いつも通りならばポーションなどの販売は終え、午後のお仕事である、ポーションなどの制作をしていると思われます。
魔力水などの補充は僕のお仕事なので、それをやらなければいけませんし、ローラちゃんにも帰った事を伝えなければいけませんからね。
「では、僕たちはチヨリさんの所に行きますが、シアさんと龍神様はどうしますか?」
「私は詰所に行ってくる。何もないと思うけど、仕事の確認」
シアさんもお仕事に向かうみたいですね。
「私は街の中をみさせてもらうよ」
「わかりました。一応、案内はつけますか?」
「平気だ。この街の事は何となくわかっている」
それも風の噂でですかね?
魔法なのか、それとも単純に龍神様だからなのかわかりませんが、凄く便利な能力ですよね。
「何か困った事があったら、詰所に来るといい。私が対応する」
「ありがたいね。それじゃ、先に行かせて貰うよ」
「はい。一応ですが、気をつけてくださいね。あと、日が暮れた頃に夕食をとりますので、それまでには戻ってください」
「あいよ」
そう言って、龍神様は手をひらひらとさせ、僕たちのお家から出ていきました。
ちょっと心配ですけど、魔鼠さん達が一応は気にかけておいてくれるみたいなので、大丈夫ですよね。
そして、僕とサンドラちゃんは一抹の不安を抱えながらも、チヨリさんのお店へと向かいました。
「こんにちは。ただいま戻りました」
「ただいまだぞー」
予想通り、ポーションの販売は既に終わっているようで、店頭に二人の姿は見当たらないので、僕たちは挨拶をしながらチヨリさんのお家の中へとお邪魔しました。
仲良くやっていますかね?
少しだけ、そんな不安がありましたが、中に入ると意外な光景が広がっていました。
「おかえりなー」
「あ、ユアンさん! お帰りなさい!」
「はい、ただいまです……何をやってるのですか?」
「見ての通りだなー」
「チヨリさんからポーションの造り方を教わっています」
「そうなのですね?」
まぁ、それしかないのですが、あまりそういう雰囲気には見えませんね。
だって……。
「でも、どうしてローラちゃんはチヨリさんに抱き着きながら作っているのですか?」
一瞬、何をしているのかわかりませんでした。
チヨリさんは椅子に座り、ポーションの制作をしているのですが、ローラちゃんはその後ろからチヨリさんを後ろから抱きしめるようにしてチヨリさんのポーション制作を眺めているのです。
「気に入られたみたいだなー」
「こうして見るのが一番勉強になりますから」
「そうなのですね?」
ローラちゃんがちゃんと勉強をしているのならいいのですが、こう見ると、まるで恋人のようにも見えるのですよね。
ですが、何でしょうか。この感覚は。
いつもなら、僕の姿を見ると僕に飛び込むように抱きついて来ようとするローラちゃんですが、今日はその様子はありません。
いや……別にそれでいいのですよ?
ですが、ちょっとだけ複雑です。
何となくですが、チヨリさんにローラちゃんをとられたような気がしてしまうのです。
「ユアンー、嫉妬してるのかー?」
「そんな事ありませんよ? 僕にはシアさんがいますからね」
ただちょっとだけ、淋しい気持ちになったくらいです。
まぁ、これでローラちゃんとの関係が崩れる訳でもありませんし、問題はないです。
「それじゃ、僕はトレンティアに魔力水の補充に行ってきますが、ローラちゃんはどうしますか?」
「私はチヨリさんからポーション制作を引き続き教わろうと思います」
「わかりました。サンドラちゃんはどうしますか?」
「私かー? どうするかなー?」
「サンドラー。やる事なかったらティロの所に行って来てくれー。薬草とかどれくらい育ってるのか知りたいー」
「ティロの所なー? わかったぞー」
ティロさんはお花を育てていますが、僕たちの要望で薬草や流水草など、薬になる植物も育ててくれています。
ナグサさんの協力もあり、この間ようやく種を蒔く段階になったというので、まだ収穫は出来ないと思いますが、それでもどれくらい育ったのかを知っておくのは大事ですね。
もし、そこで薬草などを手に入れる事が出来るようになれば、わざわざ僕達が森まで足を運ぶ必要がなくなりますしね。
という事で、僕たちもお仕事開始です。
「チヨリさん、ローゼさんに報告する事もあるので、帰りが遅くなると思いますが、魔力水は明日で大丈夫ですか?」
「問題ないぞー。魔力水ならまだまだあるからなー」
「私も少しずつですが、朝こちらに来るときに運んでいますよ!」
「そうなのですね」
ありがたいですね。
ですが、それだと僕の仕事が無くなってくるので、それはそれで困りますね。
まぁ、これは外出ばかりしている僕が悪いのですが、仕事がなくなりそうな気がするので、少しだけ怖いです。
かといって、龍神様を探す旅に出なければいけないのも確かですし……そのバランスは難しいですね。
ともあれ、一度に大量に魔力水を運ぶことはローラちゃんには出来ないので、僕はトレンティアへと向かう事にしました。
「いらっしゃい」
いつもの通り、ローゼさんから頂いたトレンティアのお家へと転移魔法で飛ぶと、これもいつも通りですが、フルールさんがお出迎えしてくれました。
「こんにちは。魔力水の補充にきました」
「そろそろ来る頃だろうと思って、用意しておいたわよ」
「いつもありがとうございます。それと、ローゼさんは今日暇だったりしますか?」
「ローゼ? うん、大丈夫だと思うわよ。王になったからといって、普段とやる事は変わりないから」
「良かったです。ちょっと、報告したい事があるのですが、時間をとれるか聞いて貰えますか?」
「問題ないわよ。私達も、ユアンから聞きたい事があったし、ユアンが来たら案内するように言われてたから」
「そうなのですね?」
「えぇ。貴女達、エルフの国へと行ったのでしょう?」
どうやら、ローラちゃんから話を既に聞いているみたいですね。
「はい。その事について、話をしようかと思っていました」
「そう……何を聞いたのかはわからないけど、ローゼを怒らせないように頼むわね?」
「わかりました」
怖い事を言いますね。
僕だってローゼさんを怒らせたくはありません。
怒ったらきっと怖い事は僕も知っていますからね。
ですが、今から話す話。
ハーフエルフがエルフの国から追い出される事になった要因をローゼさんに話てどうなるかはわかりません。
ここは慎重に言葉を選ぶ必要がありそうですね。
という事で、僕とフルールさんはローゼさんのお家へと向かいました。
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