第470話 第一の試練
「どうする?」
「困りましたね……」
僕たちはフルールさんに試練を与えられました。
恐らくはこの状況を打開すればいいと思うのですが……。
「精霊は問題ない」
「そうですよね」
フルールさんに従った精霊さん達が僕達に攻撃を仕掛けてきますけど、今の所は問題なく防御魔法で防いでいます。
防いでいるのですけど……。
「どうやって倒すの?」
「そもそも倒したくはないのですよね」
精霊さん達に恨みはありません。
なので、僕たちだって無暗に命を奪いたくはないのです。
「仕方ありませんね……フルールさん!」
「何?」
「精霊さん達では僕を倒すことは出来ませんよ」
「そうみたいね」
「なので、精霊さん達の攻撃を止めてくれませんか?」
「それはダメよ」
「どうしてですか?」
「これが試練だから」
んー……。
試練だからダメですか。
それなら仕方ありませんね。
ここは僕がどうにかするしかないみたいです。
「どうなっても知りませんからね?」
「ユアン、何をする?」
「いつもの通りですよ。精霊さん相手なら有効な魔法がありますからね」
「もしかして、私とユアンさんが模擬戦をやった時の方法ですか?」
「それが一番早いですからね」
キアラちゃんはわかったみたいですね。
という訳で、やっちゃいましょうか!
「防御魔法をもう一つ展開します」
僕たちを守っている防御魔法の外側にもう一つ防御魔法を展開しました。
前はこれをやるのが難しかったですが、普通に出来るようになったのは僕が成長した証拠でもありますね。
まぁ、その分強度は劣りますけどね。
それでも精霊さんからの攻撃を防ぐくらいならば問題ありません。
「次に、僕たちの防御魔法と精霊さん達を閉じ込めた防御魔法の間に存在する魔素を抜いちゃいます」
「でた……ユアンの鬼畜なやつ」
「そ、そんないい方しなくてもいいじゃないですか!」
「事実。あれをやられたら手も足もでない」
「私も体験したけど、あれはずるいなー」
「気付いたらあの状態ですからね……」
みんなは不服そうですね。
でも、これが一番手っ取り早いですからね。
それに、キアラちゃんとの模擬戦で有効であることはみんなも知っている筈です。
「後は待つだけですね」
みんなから多少の非難を浴びつつも、僕は対精霊さん用防御魔法を展開しました。
精霊さんの周りに魔素がなくなり、更に少しずつですが
「ユアン……」
「そろそろやめてあげたらどうですか?」
「虫みたいに落ちてる」
「可哀想だなー」
僕を悪者みたいに言うのはやめてほしいですよね。
まぁ、シアさんの言う通り、精霊さんがパタパタと地面に落下していくので、確かに酷い事をしているとは思いますけどね。
「ここまでね。第一の試練は合格」
そして、その状況を見ていられなかったのか、フルールさんは外側の防御魔法を簡単に破壊しました。
強度が落ちているとはいえ、やはり一発で壊すのですね。
ですが、一応は合格を頂けたみたいです。
「それでは、第二の試練」
そして、休む暇はないみたいですね。
まぁ、大して魔力を消費していないので問題はありませんけどね。
ですが、その前に一つ確認したい事がありますね。
「あの、フルールさん?」
「何かしら?」
「試練はあと何回あるのですか?」
「それは秘密。終わりが見えてしまったら意味がないから」
「どうしてですか?」
「次の試練の為に色々と温存するでしょ?」
確かに、終わりが見えていればそれに合わせて体力や魔力を温存してしまいますね。
「だから常に全力で挑みなさい」
「わかりました」
「それに、今のは小手調べ。次からは楽にクリアできるとは思わない事ね」
まぁ、それもそうですよね。
相手はフルールさんです。
言ってしまえば、さっきの試練は僕たちにとっては簡単でした。
あのような試練が何回も続いた所で、何の障害もありません。
「それでは、第二の試練……貴女達」
「はい」
「僕たちの出番だねー!」
フルールさんの隣に、みぞれさんとルーくんが立ちました。
そして……。
「スノー……申し訳ない」
「お姉ちゃん、助けてほしいな?」
何故か、みぞれさんとルーくんが拘束されました。
どういう状態でしょうか?
「第二の試練は、二人を救出すること。この子達を抑えつつね」
そう言って、フルールさんはトレントを数体召喚しました。
「フルールさんの召喚獣ですか」
「召喚樹よ」
フルールさんはそこに拘りがあるようで訂正しました。
まぁ、どっちでもいいですけどね。
とりあえず、次の試練は捕まった二人をトレントから救出する事みたいです。
んー……でも、試練の意味がいま一つ理解できませんね。
何の為に試練を受けているのかもわかりませんし、その試練の意図もわかりません。
フルールさんの事ですから、何らかの意味があるとは思うのですけど……。
試練という割には今の所は簡単すぎます。
「どうしたの? いつでも初めていいわよ?」
「あ、いえ……もう終わりましたよ?」
「え?」
フルールさんが驚きの声をあげています。
「リンシアさん、ありがとうございます」
「お姉ちゃん、助かったよ!」
そして、フルールさんが振り返った先には、拘束から解放された二人とシアさんが立っていました。
「なるほど……ユアンの隣に居るのは偽物って事ね」
「そういう事ですよ」
そういえばシアさんの戦い方とかってフルールさんは知りませんでしたね。
トレンティアでの戦いの時もシアさんは大怪我をして途中で離脱しましたし、その後もシアさんがフルールさんの前で戦った事はなかった筈です。
なので、シアさんが影を潜って移動をし、その際に本体は
まぁ、影を潜るのも
「それで、試練の方は?」
「合格よ」
不服そうですが、合格を頂けました。
フルールさんでも悔しそうにする事があるのですね。
ちょっとだけあの顔が見れたのは嬉しいですね!
いつもしてやられてばかりですからね!
「それじゃ、そろそろ本番と行きましょうか」
「わかりました」
先ほどフルールさんがトレントを召喚しましたので、難易度をあげてきたと思いましたが、どうやらここからが本番のようですね。
「第三の試練はこの子達が相手よ」
そして、フルールさんは新たにトレントを召喚しました。
「一人一体ずつ、各自の力のみで倒して見せなさい」
その数は五体。
ちょうど僕たちと同じ人数ですね。
「いいのですか? 倒してしまって」
「平気よ。この子達は本物の魔物ではないから、何度でも復活できるわ」
それを聞けたなら安心ですね。
僕たちにとっての召喚獣、ラディくんやキティさんやリオンちゃんとはまた違った存在のようです。
「わかりました……みなさん好きな相手と戦ってください。防御魔法や
己の力だけで戦えという指示ですからね。
多分、僕の補助魔法で力を貸すのもなしだと思います。
それに、トレントくらいであればみんななら問題なく倒せると思います。
「では、第三の試練始め」
フルールさんの合図で僕たちは散るようにしてトレントへと向かいました。
この様子ですと、試練はまだまだ続きそうですね。
何せ、最後の試練はきっとフルールさんが相手です。
それに、僕に
次の試練辺りから厳しくなりそうだなと思いつつも僕はトレントへと走りました。
右手に刀を握りしめて。
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