第130話 フォクシアで買い物をする

 僕とスノーさんが街へと出ると、予想通りというか当たり前というか、狐族の人が沢山いました。

 服装は、女性はアリア様が着ていたような着物という服が多く、男性は同じような材質の服を着ています。着物と違って上下に別れた服です。

 もちろん、アリア様の着ていたような煌びやかな花柄ではなく、青や緑など落ち着いた色の人が多いです。

 もちろん、僕たちのようなルードで着ているような服を着ている人もあちらこちらに見られますけどね。

 ですが、主に着物を着た人が多いのは事実です。

 そんな中、僕とスノーさんはお目当ての物を探し、街を歩いています。

 主に、スノーさんがですけどね。

 目的は当然……。


 「見た事ない食べ物がいっぱいあるね」

 「そうですね。これも倭の国のお菓子ですかね?」


 スノーさんが探していた物、それはお菓子です。

 そして、僕たちは一軒のお店の前で立ち止まりました。

 丸い玉みたいなのが串に3つ刺さった食べ物が目立ちます。

 茶色のタレがかかっていたり、黒い塊みたいなのが乗っていたりと色々な種類があるのがわかりました。


 「美味しいのでしょうか?」

 「どうだろう。食べてみない事にはわからないかな」


 気になりますね。

 焼きたてと言えばいいのでしょうか、甘いような香ばしいような匂いが僕たちに届きます。

 匂いだけならとても美味しそうに感じます。


 「いらっしゃい。お嬢ちゃん達は団子が気になるのかい? 見た所、この国の者じゃないようだしの」


 僕たちがお店の中を覗いていると、お店の中からおばあさんが僕たちに声を掛けてきました。


 「はい、珍しい食べ物がありましたのでつい……ご迷惑でしたか?」

 「そんな事はあらんよ。どうじゃ、一本ずつ食べてみるかい?」

 「いいのですか?」

 「うむ、気に入ったなら買ってくれ。他にも色んな種類があるぞ」


 そう言う事ならと僕たちは1本ずつ団子という食べ物を頂くことになりました。


 「甘いですね! この黒いのがすごく甘いです!」

 「うんうん。それに柔らかいし、面白い食感だね」


 柔らかいのに弾力があって普通に美味しいです!


 「他にも食べるかい?」

 「はい!」

 

 これだけ美味しいのなら他のも食べたくなりますよね!


 「私は、そのタレがかかったのと、3色のやつをちょうだい」

 「僕も同じのをお願いします」

 「ほいほい。1本銅貨1枚じゃよ」


 そして、値段も安いです。

 タレがかかったのがみたらし、色がついたのが見た目通り3色団子というみたいです。

 ちなみに、最初に食べた黒いもの餡子というみたいですね。


 「これなら、お土産としても持って帰れそうですね!」

 「そうだね。折角だし、沢山買おうか」


 安いですし、お腹にも溜まります!

 非常食にもおやつにもなりますし買い込むのはありですね!


 「すぐ食べないと固くなるぞい?」

 「そうなのですか? ですが、それなら大丈夫ですよ!」


 僕には収納魔法がありますので、それも時間が経過しない!


 「ほぇ~……嬢ちゃんは凄腕の魔術師じゃったか」

 「いえ、凄腕でもないですし、魔術師ではなく魔法使いですよ」


 魔術師は魔法陣や魔法道具マジックアイテムなどを媒体に魔法を使う人を指します。

 体内に流れる魔力やそこらに漂う魔素を元に魔法使う僕みたいなのが魔法使いです。


 「狐族で魔法使いか……それも珍しいがな。まぁ、せっかく作ったものが無駄にならないようなら好きなだけ買ってくれると嬉しいわな」


 狐族は魔法の扱いに長けていると聞きましたが、どうやら魔術を主に使うみたいですね。


 「まいど~。良かったらまた来てな」

 「ありがとうございました」


 結局、銀貨5枚分……50本くらい買っちゃいました。

 主にスノーさんがあれもこれもと色々選んだ結果ですけどね。


 「いや~いい買い物だったね」

 「そうですね。美味しいですし、何よりも値段が安い事が魅力的です」


 それに、使っているのはお米……もち米という種類みたいなのですが、お腹にも溜まりますので、僕の朝ご飯にもちょうどいい感じです。


 「あ、スノーさんあそこ……」

 「洋服屋さんかな?」


 お菓子を買い、ほくほく顔のスノーさんと歩いていると、ふと僕の目に留まったお店がありました。


 「フォクシアの人が着ているような服が沢山ありますね」

 「着物だね。ちょっと寄ってみる?」


 折角なので、僕たちはそのお店に立ち寄ってみる事にしました。


 「いらっしゃ~い。あら、人族の人に可愛い子狐ちゃん」

 「これでも成人していますからね?」


 僕は子供ではありませんので、しっかりとそこは訂正させて頂きます。


 「あら失礼。それで、着物をお求めですか?」

 「はい、といってもこの手の服は初めてですので見させて貰ってもいいですか?」

 「どうぞどうぞ~。ごゆっくり~」


 そういうとお姉さんはお会計をするカウンターに戻っていきます。


 「スノーさんどういうのがいいのですか?」

 「どうだろうね。 やっぱり高いやつがいいんじゃない?」


 値段ははっきり言ってピンキリでした。

 高いのは軽く金貨単位ですし、安いのは銀貨を出せば買えそうなくらいです。

 触った感じ、安いのはざらざらとしていて、高いのはサラッとしてる感じです。

 使っている材料が違うのでしょうか?

 それにもっと困るのは……。


 「そもそも着方がわからないですよね」

 「確かにね。帯を巻くのはわかるけど……」


 そう、着方がよくわからないのです。

 ある意味、ローブみたいな感じで切れば良さそうに見えますけど、ローブと違って、華やかですし、柄も色々とあります。

 着方によっては、折角の柄を隠してしまいそうですしね。


 「お困りですか~?」

 「あ、はい。色々と」


 最初のうちは僕とスノーさんのやりとりを見守ってくれていた店員さんが声を掛けてくれました。

 まぁ、二人であーでもないこーでもないと喋っていれば仕方ないですよね。


 「そうですね。お客様の用途に合わせればいいと思いますよ?」

 「用途ですか……」

 

 まず、旅の最中には着なさそうですね。

 動くと帯が解けそうですし、動きやすさで考えると適切ではないと思います。


 「冒険者様向けの着物もございますよ?」

 「そうなんですか?」

 「はい……といってもお客様が着られているようなローブを元に作ったものですけどね」


 見せて頂いたのは、ローブの材質を布から着物に変えたような感じでした。


 「風通しが良いので、夏場であればローブより快適に過ごせますよ」


 ローブは正直暑いです。

 特に夏場となると、体温が上昇し、汗を沢山かくことになります。


 「今は大丈夫だと思います」

 

 ですが、それにも利点はありますからね。そもそもローブを着用するのはあまり目立たないようにするためですし、花柄の明るいローブではあまり意味はないです。


 「できれば、室内で着用するようなのがいいのですが……」

 「それならこちらですね」

 

 お姉さんの案内の元、別の所に移動すると僕は驚きました。


 「た、高い……」


 お姉さんが案内した場所は、金貨1枚では足りない場所でした。


 「も、もっと安いのは……」

 「そうですか? こちらのクラスが1着あると便利ですよ? こちらはルードの職人に頼み輸入した物になりますし」


 ルードにも着物があったのは知りませんでした。


 「あれ、それって魔法道具マジックアイテムですか?」

 「はい、お客様の仰る通りです~」


 よく見ると、着物に魔力が籠っているのがわかりました。


 「こちらは魔法道具マジックアイテムを扱う、妖精トリック悪戯スターの職人に作っていただいた品になります。


 魔法道具マジックアイテムとあれば、その額になるのは納得しますね。

 それと、妖精トリック悪戯スター……どこかで聞いた事がある気がします……。


 「まさか、こんな所でシアのお姉さんのお店の名前を聞くとは……」

 「あ、そうでした!」


 聞いた事があると思ったらな、イルミナさんのお店の名前がそうでした!


 「あら、ご存知なのですか?」

 「はい、知っている人のお店です」


 それならかなり安心して買う事が出来ますね……って買うと決まった訳ではありませんけどね!


 「効果はどんななの?」

 「こちらはサイズ変更が可能となっておりますよ~。なので、子供から大人まで誰でも着れます」


 シアさんが着ている服がそのタイプなのでその使いやすさはよくわかります。


 「ですが、1着金貨3枚ですか……」

 「魔法道具マジックアイテムですからね。ですが、人気ありますよ~? もちろん、部屋着だけでなく、外でも着れますし」

 

 値段を考えれば妥当だと思います。

 しかし、それを買うに至る決定的なものがないのですよね。


 「私は買うよ。これとこれをお願い」

 「ありがとうございます~」


 僕が悩んでいると、スノーさんは迷わずに購入を決めていました。

 白をベースにした着物と翠をベースとした着物を1着ずつです。


 「私はキアラが着てるとこみたいからね。ユアンもシアが着てるところ見たいんじゃない?」


 2着買ったのは、どうやらキアラちゃんの分も含まれているみたいですね。白と翠……二人のイメージカラーを選択した理由はそこにあったようです。

 そして、シアさんが着物を着ている所を見ているかと問われると。


 「見たいです」


 シアさんが着ている所を想像すると是非とも見てみたいと思います。すらっとした体形のシアさんが着たらすごく綺麗だと思いますからね。


 「なら、たまにはシアにプレゼントしてみたら? すごく喜ぶと思うよ」

 「そうですね」

 

 スノーさんのその言葉が決め手となり、僕も購入を決めました。

 僕とシアさんのを1着ずつです。

 ただ、問題は色と柄ですよね。

 僕はそこから30分ほど悩みに悩み、シアさんに似合う着物をじっくりと考えた結果、僕とシアさんの着物をようやく購入したのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る