主人公はフクロウ
楠木みつ
第1話
ここはフクロウ王国
この国でもいじめというものが存在している
この物語の主人公、フクロウ・アミティエ(10歳)もまたいじめの標的となっていた。
「また今日もやられちゃったよ」
「どうして僕ばっかり……」
彼は学校で嫌なことをされ毎日うんざりした日々を過ごしていた。
そんな彼の唯一の楽しみは人間界を見ることである。人間界はフクロウ王国の下に存在しており、フクロウ王国の真ん中の広場に作られた穴があり、そこから見ることができる。
人間界を見るのが楽しみになったきっかけは数週間前のできごとからだった。
アミティエはいつも通り学校を終えて1人で帰っていた。そこにいつも嫌なことをしてくるグループが後ろからやってきた。
「おい、待てよ!まだ終わってねーよ。俺は今日すっげーむしゃくしゃしてるから特別に殴ってやるよ」
そう言われ頭の部分を掴まれ連れてこられたのは、穴の空いた真ん中の広場だった。
そこにアミティエは乱雑に投げられ問いかけられた。
「この穴から人間界に落とされるか俺に殴られるかどっちがいいかお前に選ばせてやるよ」
この国では人間界で住んでいるフクロウは出来損ないだと学校教育で教えられる。
アミティエもその教育を信じており、なおかつ、フクロウを道具としか使っていない人間を嫌っていた。
そのため
「やだよ…殴られるのは嫌だけど落とされるのはもっと嫌だ!」
「じゃあ殴ってやるよ」
アミティエは目を閉じた。と同時に顔全体に痛みが走った。必死にこの時間を耐える。
何分たっただろう…体を起こして目を開けると暗闇だった空が明るくなっていた。
「もう、お昼なんだ……」
フクロウは夜行性のため夜に活発に動く。
この国では夜に学校や仕事がある。
そのためお昼は睡眠時間だ。
アミティエはその場を動かずぼーっとしていた。何時間たっただろうか、空が茜色になり夕方になったことに気づく。
「夕方になっちゃった。学校行かないと……行きたくないなぁ」
頭では行かないとダメって分かっているけど体は動かない。
そんな時にフッと穴に目がいった。
穴から見えた景色は小さな人がたくさん見える。その中でアミティエは驚く者を見つけた。
「僕と同じことされている人がいる!!」
アミティエが見たものとは、人間の世界でアミティエと同じように同級生から殴られている少年の姿だった。少年は何度も何度もやり返そうとしているが足を引っ掛けられて転ぶ。その繰り返し。
「僕と同じような人が人間界にいるなんて知らなかった。なぜあの子はあんなに強いんだろう」
やり返そうともがいている少年を見てアミティエの気持ちが変わった。
「あの子と友達になりたいな。でも今の僕じゃ会えない、会える僕に成長しなきゃ」
そこから人間界の観察が始まった。
アミティエへのいじめがなくなる訳はなく、殴られれば痛いし、どうして僕ばっかりって考えてしまう。そんな時人間界を見てアミティエは心を奮い立たせた。
「僕が頑張ったら友達になれるかな」それだけを考えて必死に毎日を過ごしていた。
人間界で少年を見つけてから一ヶ月が経とうとしていた。
「おい、待てよ今日も遊んでくれるんだろ?いつものとこで遊ぼうぜ」
後ろから聞きたくない声が聞こえた。
今日こそやり返してやる、と心に決めていた。アミティエは、彼らの誘いに乗った。
「今日はえらい従順だなぁ、いつもはもう少し嫌がるくせに。やっとお前の立場が分かったか」そう言いながら笑っている奴らをアミティエは睨んでいた。
「いつもの僕とは違う!」
「うるせぇよ。睨んでんじゃねぇ」
ドスっと鈍い音が聞こえた。アミティエの体にヒットしていた。
「口だけじゃねえか。いつもと変わんねーな」
「違う!!早く行かなきゃダメなんだ!だから僕は……」
ドスっと鈍い音がまた聞こえた。
アミティエは焦っていた。いつも人間界を見ていて気づいたのだ。少年への暴力がエスカレートしていることに。
「黙れ!お前は喋っちゃいけねぇんだよ」と言いながらまたアミティエは殴られた。
しかし殴られたと同時にアミティエが殴ってきた奴の体にパンチしたのだ。
奴らは驚き、殴られた奴はよろめいた。
「お前、俺を殴ったな」
「ぜってぇゆるさねぇ」
そんな彼らの言葉をアミティエは全く聞いてなかった。
「やったぁ、僕のパンチが届いた!初めてビビらずにやり返すことができた!
これで会いに行ける。友達になれる!」
アミティエの中は、もう少年と友達になることばかり考えていた。
すると「おい!聞いてんのか!お前俺を貶すのもいい加減にしろよ。顔が変形するまで殴ってやる」彼らの怒りがピークに達していた。
アミティエにふりかかる拳をアミティエは避けた。
やり返したことでこの国への未練がなくなったアミティエは少年に会いに、少年を助けるべく穴の中へ飛び込んだ。
主人公はフクロウ 楠木みつ @ponponsyou23
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