小さなおはなし
@somari_kanakura
静かな街
僕は目を覚ました。
もう朝か。まだ寝ていたいな…
何度か寝返りを打って姿勢を変えたりしてみたがもう眠ることはできないようだ。
ぼくは渋々身体を起こした。
今日は土曜日で学校はない。
ぼくはおなかが空いたので、リビングに向かった。もう朝ごはんというより昼ごはんかな。
リビングには誰もいなかった。家族の姿はない。買い物にでもいったのだろうか?ぼくはとりあえずSNSを覗く。
そこにはいつもとは比べものにならないほどの大量の投稿があった。
「誰かまだ残っている人はいませんか?」
「家族がいない」
「みんなどこ行ったの?」
「よかった。ミサキちゃん今どこにいるの?早く会いましょう」
「RT:緊急速報:人の大量消失について」
「どういうことなの?なんでみんないないの?」
「誰でもいい!誰かいないか!」
「RT:人間の世界規模の消失。我々は神の怒りに触れたのだ」
「RT:残っている方々は至急こちらへお集まりください。」
1時間前より投稿は途絶えていた。
ぼくは寝ぼけた頭が少しずつ冴えていくのがわかった。
テレビをつける。
緊急速報と銘打ったテロップでスタジオが映し出されていた。しかしそこに人はいない。
何かの冗談、ドッキリ。一瞬頭をかすめたがそんなものでは説明できないことは実感としてわかった。
ぼくは外に恐る恐る出てみた。静かな街からは鳥の鳴き声すら聞こえない。
しばらく呆然とする。見慣れた景色は全く別物のようにぼくの目には映った。
片っ端から連絡を送る。母親、父親、友達、知り合い…思い当たるところからどんどん連絡を入れて行く
「いる?」「いる?」「いる?」「いる?」
落ち着かない。ぼくは簡単に荷物をまとめると外に飛び出した。恐怖に慄く一方、ぼくはこの非日常に興奮していたように思う。みんなが集まっているという場所に自転車を向けた。
大通りに出ると至る所で車が事故を起こしており火柱を上げている
ぼくは大声で叫び続けた。
「誰かいませんか?誰か!誰か!」
「います!ここです!良かった!」
返答が聞こえた。ぼくは全速力でその声の場所に向かう。
「呼んでてください!そっちに向かいます。」
「はい!」
声の主は小学生の少年だった。彼も自転車で集合場所に向かっていたらしい。
「急にだれもいなくなっちゃって…それで」
「おれと同じだ…よかった!さぁ向かおう。まだ僕たちみたいに生き残ってる人がいるはずだ。」
「わかりました!本当に良かった…」
僕ら2人は集合場所に向かう。何度も叫んだ。
「誰かー!誰かいませんかー!」
僕らは集合場所の広場にたどり着いた。
しかしそこには誰一人いなかった。
「誰もいないじゃな…」
がしゃん。
自転車が倒れている。少年の姿はそこにはなかった。
しんと静まりかえる空間がただ広がっている。ぼくはそこに一人だけ立っていた。
「誰か!誰かいませんか!ぼくはここにいますから!誰か!」
ぼくの声が虚空に響く。ぼくは自転車で走り続けた疲れでそこに座り込んだ。
携帯を取り出す。既読はついていない。インターネットはもう繋がらなかった。
その時自分なんかではもうどうにもならない大きな存在が自分を包んでいるという感覚、ぼくの額には冷や汗が流れた。
「なんなんだよ!おれは消えないぞ!消えてたまるか!」
ぼくは残る力を振り絞り、立ち上がって叫んだ。
「お前が何かは知らないがゴミだ!おれはおれだ!お前なんかにはどうするこ」
広場には唐突に静寂が訪れた。もう誰の声も音も聞こえない。
その静かな空間は永遠に続くように思われた。
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