第二話 異世界で詐欺に遭いかける神さま
神速のせいで一切気がつかなかったが、目の前には大きなこの世のものではない。訳ではなく、異世界では普通にいる、茶色の二足歩行の何かがいた。
気づいた時には腰に帯刀されていた一本の刀の紫雲を抜き、その巨体を腹から斜めに胸あたりまで切り裂いてしまっていた。
その時、ミニステータスのスキル欄に『抜刀』が黄色く表示されていた。
そして当の突然現れ切り付けられた茶色い巨体ことモンスターのグレートオーガは、最後の言葉も言えずに切られた切断面をあらわにしながら、真っ二つになり。倒れた。
「・・・やっちゃった?神様が殺人犯してしもうたんか?」
『あ、それモンスター。うわー。きれいに切ったね、グレートオーガの内臓なんて見たことなかったけど・・・きついなこれは』
「モンスター?グレートオーガ?」
『ああ、今
「なるほど。で、このグレートオーガが落としたこの石はなんじゃ?」
身が早くも朽ち始めたグレートオーガの心臓部にあったくすんだ赤色の石を手にし、空へ掲げる。
この時、白仙は魔石に映った自分の目のマークが左右反転しているのに違和感を覚えていた。
『うーん。声しかないからわからないけど、きっと魔石だと思うよ?それは、いわばこの世界のお金の元だ。グレートオーガ一個だと・・・資料によると銀貨一枚に銅貨四枚が相場のようだよ』
「ふむ。我はこの魔石を集めながら金銭をやりくりせなあかんのかや?」
『ああ。そうだな。この世界で白仙には冒険者という体で、色々と仕事をしてもらうからな、基本的に魔石が収入源だろう』
「ならば、持っていた方がよいのだな?」
『そうだな。あと、銀貨一枚が約百円だと思って考えるといい。銅貨は十円で、一応この世界で一番高価な金貨が一枚十万円だ』
「分かった。我はこれから向かう場所があるのでな。ここでもたもたはしておれぬのじゃ」
『なんだ。そうかそれじゃあ。また何かあったら連絡する』
とうとう、一方的であると公言してきた
この時、白仙は気づいていなかったがグレートオークと対峙した時、スキルは合計で三つ機能していた。そう。一個だけ、白仙は気づいていなかった。
それから数分。神速のおかげもあり、街へはすぐについた。街へ入り、辺りを見回しながらギルドと呼ばれる場所を探す。
すると、ギルド会館と大きく書かれた看板の立つ建物を見つけ、外見はレンガ造りの赤味がかった色合いをした三階建てほどの縦長の建物。
中へ入ると、目の前に四つのカウンターに右手にはバーカウンターのような設備。左はコルクボードに紙がたくさん張ってあり、その前には複数人の人で塊ができていた。
「いらっしゃいませ」
カウンターの右から二番目の人に声をかけられ、その人の方へ近づく。
「何かご入り用ですか?」
「ダンジョンへ入るためのものをもらいに来たのじゃが」
「ああ、冒け・・・ギルド登録ですね!こちらのファイルからギルドをご選択いただきまして、登録となります。登録には百銀貨。掛かります」
「・・・」
白仙は訝し気な表情を取る。白仙が独学でほんの趣味程度で覚えた嘘を見破る力。独学と言えど、精度は神様級。目の前の職員の目と喋り方で判別できる。そして確信する。
「どうかなさいましたか?」
「本当は?」
「はい?」
周りから見れば、白仙は神様ではなくただの変な服と装備を身に付けた少女である。その思いは職員の女性も例外ではなく。
少女に突然、嘘を見破られたうえ遠回しに嘘なんだろ?と自白させに来ているとくればもう、ビジネス笑顔などできるはずもなく、笑顔が引きつり始める。
「だから。我をカモになどできるわけがないじゃろう。答ぇ?登録は何でなんぼ必要なんじゃ?」
表情一つ変えずに、カウンターにズイッと身を乗り出してくる白仙には職員もなすすべなく、苦し紛れに、登録用紙を引き出しから取り出す。
そして、その時ミニステータス内でまたあのスキルが黄色く表示されていた。
紙にはギルド登録ではなく冒険者登録と書かれており、職員が詐欺をしようとしていたことを肯定するようであった。
「これに記入をお願いします・・・」
営業スマイルはどこへやら。嫌な客がきたコンビニ店員のような顔をしながらペンを差し出してくる。
それを受け取り、用紙に名前を書いた後に職員の元へ戻す。
「はい。確認しました。エルミ!登録」
椅子から離れ、奥にいる職員へ声をかける。何気にこの職員はここでは上の方の人間なのかもしれないと白仙は思ったが、どうでもいいと考えを捨てる。
「どうぞ。冒険者証のカードです。先ほどは失礼しました。今後ともギルド会館をご贔屓ください」
椅子に座らずに、部下らしき人が持ってきたカードを受け取り、白仙へ差し出し、深々と頭を下げた。律儀なのかもしれないが、そんな上っ面の対応など、白仙に通用するわけもなく、黙ってギルド会館を後にする。
道に出て、またあのダンジョンに向かうため街の入口へ向かう。
街の入口を抜け、神速を使おうと足に力を入れた瞬間、少し後ろ。アーチ状の入口の左右から男三人が声をかけてくる。
「どうも。お嬢さん」
「はいはい。どうもどうも」
「何用じゃ」
「少々その武器に興味がありましてー高値出買い取らさせていただきたいなーと」
元の国の方でも時々見かけたあの手をこする謎の動作をしながら詰め寄る、ガタイのいい男と細身の男にフードを被ったまま声を発さない、刀を売れと近づく三人組に白仙も少なからず引き目で戦闘態勢をとる。
白仙の何かが、この三人組は危険だと警報を発していた。
「この刀は売れんし、我にしか扱えぬ。売るなどする訳がなか」
「ああ。そうかよ!でもな、それ欲しがる貴族様がおったんでね!力づくでも取らさせてもらいますよ!」
ガタイのいい男がそう叫ぶとともに、隠し持っていた短剣を出し、細身の男も同じく短剣を出す。
フードの男は相変わらず、何もせず俯きがちであるばかりで、別段何もしようとしない。
「ちっ。我も暇ではなか。一秒でケリをつけよう」
白仙が刀に手を触れた瞬間にはもう向かってきていた男二人の生命活動など、止まる寸前。
次の瞬間には生命活動は停止し、遺言なく上下で二分割された死体が倒れる。それは、本当に一秒足らずのことである。
「ん?一人逃してしもうたか・・・まあよか」
白仙はかがみこみ、男二人の上半身から銅色と銀色の硬貨合わせて銀貨十七枚分を得つつ、ダンジョンヘンタ戻るため、死体を放置して神速を使う。
この時もまた、スキルの一つが黄色く表示されていた。
ダンジョンへ着き、冒険者証を提示し初めての仕事となるダンジョン攻略が始まった。
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