第一話 管理職のテキトーさ加減は神さまでも


「うにゃぁーーーーーーーー!!!!死ぬーーーー!!」


 紐なしバンジーから数分が経ったが、未だ地面までは遠い。


「うにゃぁーーーーーーーー!!!!息っ!息できっ!」


 低酸素な高度である。


「うにゃぁーーーーーーーー!!!!鳥ぃ!バードストライクぅ!!」


 鳥が飛び始める高度である。


「うにゃぁーーーーーーーー!!!!地面!地面!血肉巻きちらすーーーー!!」


 地面を突き破り、高度はマイナスである。

 そう。白仙びゃくせんは異世界の地に足を付けることを取り越して、埋まったのである。


『白仙。聞こえてるか?そろそろ地面のはずなんだが」


 さざなみが特有の能力テレパシーを使って白仙へ連絡を取る。


「地中じゃ」

『は?』

「地面ではなく地中じゃ」


 訳が分からず聞き返してくる漣に念押しをしつつ、なんとか体を穴から出し、空を仰ぐ。バンジーの最初の地点は分からないが、途方もないほど高いのだけは理解した。


『ま、まあいい。ステータス確認を願う』

「ああ、そうじゃったな」


 バンジー前の会話で言われたやってほしいことの一つであるステータス確認。この異世界に降り立った瞬間から発生する謎のデータである。


 ステータスがこの世界での生きる指針の一つとなり、それで迫害を受ける人々も少なからずいるのがこの異世界での問題の一つでもあった。


「ステータスオープン」


 お決まりの言葉を言うと、目の前にいくつかの画面が現れる。


 レベルに始まり、スキルに自身のデータ。記録を付けるときに時々見た情報と似ているものだと白仙は思いつつ、ステータスに目を通す。


(レベル七百にスキルが七つ。そして、ふむ。しっかりとあるな。やはりこの能力がなきゃ我は生きておれんからな)


『どうだ?一応、レベル四十以上あれば楽なんだが』


 そう漣に言われ、ステータスを見る目が止まり、尻尾と耳がピンと張る。


 レベルの標準をゆうに超す数字の出ている、ステータス画面に目を戻し、いろいろと思案する。


 レベル七百。漣の出した最低基準から六百六十レベルも上。こればっかりは、普通に言っては何か問題起こってしまうのではないか。天罰を下す以前の問題ではないのかと考えた結果。白仙は決意して、漣へステータスを伝える。


「ええっとな?レベルは七十じゃ。あとスキルは七つあるようじゃな」


 嘘を伝えることを選択した。漣は神の中でも嘘を見抜けない方の神であると知っているからこそこの選択をした。少しだけ罪悪感を感じつつ、ステータス画面を閉じる。


『七十。なら十分仕事ができるな!テキトーなダンジョン探してクリアしていくのが当面の仕事になるな。レベル上げがなく済んでよかった。何かあったら言ってくれ。じゃ』


 そう言い残して漣は能力の使用を切った。電話のぶち切りかのように。


「さて、とりあえず手ごろなダンジョンとやらを探すかの」


 事前にダンジョンの入口のスタイルを聞いていたため、歩いて数分で目的地にたどり着いた。

 ダンジョンの入口には甲冑を着て、槍を持った人間が立っていた。


 普通に彼の横を素通りで行こうとする白仙に静止の言葉をかけてくる。


「すいません。ギルド会証をご提示していただかないと入ることできません」

「なんじゃと?その会証はどこで手に入るんじゃ?」


 岩で囲まれた荒れ地の一部分にできたダンジョンの入り口前でやり取りする二人の姿はそれまた、奇妙な状況であった。


「ああ。ここから一番近いのは・・・デリオロスというそれなりの大きさを持つ街ですね」

「デリオロス・・・ああ、ありがとう」

「いえ。旅路には気を付けて」


 即座に漣と連絡を取ろうとしたとき白仙は、こっちから連絡が取れないことに気が付いた。

 神様が扱える神力いわば能力が、漣は通信系に対し白仙は変化系。相互が通信系ならば両方から話したりできるのだが、白仙ほどの神といえど神力の枠を超えることには限界があった。


 そして思わず愚痴を漏らしてしまう。


「このクソ小童めが!」


 空を見上げそんなことを荒野の中で叫びつつ、兵士に言われた方角にあるという街を目指し走り出す。


 瞬間。景色が線となり後ろへと流れだす。何かと思うと左下の方にミニステータス画面にが表示され、スキルの欄に黒い文字で七つある文字の内、『神速』というスキル名だけが黄色く表示されていた。


(ふむ。きっと発動しているスキルが黄色くなっているのかの?っとよそ見をしすぎってにゃあ!?)

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