昨日の君は今日の思い出になる。

フクロウ

第1話

 ちょっと聞いてもらいたいことがある。いや、俺以外からしてみればホントにどうでもいいことなのかもしれないのだが、少しでも興味があるのなら、この話に付き合ってほしい。


「ねぇ、お兄ちゃんそれ何?」


 電車に揺られながらつり革に捕まっていると、一人の少女が服の袖を引っ張り首に吊るしてある黒い機械を指差して聞いてきた。

 腰を少し折り少女の頭を撫でながらできるだけ優しい声音で質問に答えてあげた。


「これはね、カメラって言うんだよ。」


「カメラって何?」


 子供とはホントに純粋である。知らない人にも簡単に話しかけてくる。ただ、それを見ていると昔の自分を思い出してほんの少し寂しさを思い出してしまう。


「そうだね~う~ん。まぁ、簡単に言うと思い出を形に残すもの……かな?」


「へぇ~何かすごいね!」


 その時少しの揺れが起こり電車が止まった。それと同時に、少女の母親らしき人が話しかけてきた少女を呼び、それを聞いた少女は笑顔で『バイバイ』と元気よく言うと振り返り母親の元へと走り去っていった。

 つい、その時カメラを手に取り少女の後ろ姿を撮ってしまった。何故だろう、そう感じたがすぐに答えはわかってしまった。俺は少女との思い出を形として残そうとしたのだと。


「………それにしてもカメラのことを思い出を形として残すものなんて俺が言うなんてな。」


 まぁ、間違いではないと思う。実際に俺も古い思い出を、悲しい思い出を、そして大切な……あの子の思い出を形として残しているんだから。そんなことを考えているとカメラのメモリーから昔とった写真を見始めてしまった…………。



 さて、話を戻そうか。俺の聞いてもらいたい話はそれは、楽しくて、嬉しくて、懐かしくて、それでいて悲しい、そんな大したことのない、俺の古い……青春の思い出だ。

 まぁ、お茶でもコーヒーでも飲んで気軽に聞いてくれ。





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