短編習作集

片刃御供

春昼の猫

 一匹の猫は太陽を背中にためていた。


 全身に湛えた柔毛を輝かせ、ひげを誇らしげに膨らましている。風紋ふうもんのような毛並みの喉元を鳴らして、前足を体にしまって箱になっている。

 滑やかな背中を撫でると、僅かに眼を開けて胡散臭そうに一瞥する。無遠慮に大あくびをし、首を撓垂しなだれて背中を塗り直す。


 突然、起き上がりやってきた小鳥を眼を見開いて凝視すると鼻息荒く尻尾を逆立てて僅かに興奮の声が漏れ前傾が引き絞られ跳躍する機会を伺う逡巡しゅんじゅん、羽ばたきが響きわたり、気まずそうに顔を洗う。


 を終えて、また忙しなく太陽を集める仕事に戻る。毛皮に沈み込む熱がたまると、体を干物のようにひっくりかえす。倦怠とじゃれあい、透明を見つけては眺め、気ままに耳の裏を足で搔く。


 気怠げに体を回転させ丸くなると、耳をわずかに動かして、まどろみに帰っていく。


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