ある事を言ってみた 第1話

 


 1月3日。



 正月も3日になれば神社も空いてるだろう――。


 そんな俺の予想は、見事に外れていた。




 1日、2日と、何をしてたんだ。


 自分の事は棚に上げて、周りにうじゃうじゃ居る奴等に心の中で突っ込んでいた。


「ちょっとコレ、返してくるなー」


 俺の同居人、中野浩行は去年買ったお札を手にそう言って、何人ずつ並んでんのかも判らない、グチャグチャの列から離れた。


 人込みが嫌いな俺は、恨めしげに浩行を目で追う。


 置かれた専用の箱にお札を入れた浩行に、振袖姿の女が2人、話しかけている。


 傍から見れば、「友達か」と思うくらいの親しみさで、浩行が笑顔で何やら答えていた。




 ――別行動決定だな。




 わずかに進んだ列に足を進めながら、心の中で思う。


 2人のうち1人は、見るからに浩行の好みのタイプだ。


 もう1人を俺に任せて彼女と2人になりたがるだろうが、今日はそんな気分じゃない。


 せっかく久々にバイトが休みなのだ。


 家に帰って寝るか、と我ながら全然若者らしくない考えを巡らせていた。


 前に並ぶ人の背をぼんやり見つめながらそんな事を考えていると、ガシリと右腕を捕まれる。

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