第5話


「俺は、フラれた事はない」


 断言しながら、瓶に付いたままのコルクを浩行へと向ける。


「ちょっ、危ないってッ」


 両手で顔を庇う浩行に、「まだ針金も外してないぞ」と笑ってやる。ソファに座って俺がコルクを外すのを眺めていた浩行は、俺がコルクを飛ばさず外した事に感心の声をあげた。


「相変わらず上手いよな、シャンパン開けんの」


「そうだな。今日は零れもしなかった」


 そう言って、浩行が差し出したグラスにシャンパンを注いでやる。


「俺は、ポーンって外すのも好きだけど」


「屋外ならな。そうしてやってもいい」


 自分のグラスへも注いでから、「ところで、これはどういう事だ?」と浩行に訊いた。


「何が?」


「今日お前デートだったろ。晴美と」


「ああ、俺も別れてきた」


「は?」


「『さつきにあんな言い方するなんてヒドい』だってさ」


 自業自得かよ。


「だから、修とクリスマスしようと思って」


「俺が今日帰って来なかったら、どうするつもりだったんだよ」


「明日してた」

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