第3話


 マンションに帰ると、誰もいない筈のリビングに灯りがついていた。


 ドアを開けると、ソファに座り込んだ同居人の中野浩行が、首だけで振り返る。


「あっれぇ? 早くない?」


 驚いた声をあげて、今まで観ていたらしいテレビの電源を切った。


「そっちこそ」


 それだけを言って、自室に入る。服を部屋着に着替えてから、リビングへと戻った。


 すると浩行が、いそいそと硝子テーブルの上にグラスやシャンパンを並べていっている。


「お前、何やってんの?」


 ソファに座りながら不機嫌に言った俺に、浩行は「ん? クリスマスの用意」とキッチンに姿を消した。すぐに戻って来たその手には、ケーキの箱が乗っている。


「じゃなくて、さつきと何やったんだよ」


 俺が言うと、「ああ、そっちか」とソファではなく床に座り込んだ。


「いや。さつきがさー、『修もロック大好きなのー。あたし達って相性バツグンなのよねー』とか言いだすモンだから、『修は、クラシックが好きなんだぜ』、と」


 そう言いながら、4号だか5号だか知らないが、1ホール丸々のケーキにナイフを突き立てた。

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