フクロウは悪くない

フクロウに対する言いがかり

廃墟になった街で一人の男が杖をつきながらよたよたと歩いている

彼は自分が人類最後の一人である事は男は知らない

男の人生は色々有ったが他の人類よりも幸運だろう

偶然見つけたシェルターを見つけて十数年は安泰に暮らせたのだから

だが食料が無くなったので十数年ぶりに外へ出たのだ

男は50代半ばの筈がやつれ衰え80代と言っても通用する見た目になっている

男はシェルターを出たその日から食料を探し歩き回っている

だが食料を探して早五日、食料は一向に見つからない

男の飢えは限界にまで達していたが

男は人間が居ない街を今日も歩くのだ

そんな中、ばさばさと男の頭上の電線に一匹の鳥が降り立った

その鳥はフクロウ、絶滅危惧種だ

男はそのフクロウに対して罵詈雑言を浴びせかけた

何もかもフクロウが悪い!!

もしフクロウが居なければフクロウに似ていた大統領に対する風刺として

フクロウが用いられずに荒波は立たなかった!!

そして切れた大統領が暴言を吐かずに退陣する事も無かった!!

後任の大統領が起こす不祥事も起きなかった!!

フクロウさえ居なければ我が祖国は永遠に世界の盟主足り得たんだ!!

何もかもフクロウが悪い!!

何も私一人が思い込んでいる訳では無い!!

フクロウは祖国の失墜の象徴となり唾棄され積極的に殺処分される事になった!!

一過性の者では無い一世紀もの長きに渡る国家事業としてフクロウは狩られていた!!

フクロウさえ居なければ動物愛護の連中も騒がすに大人しくしていた!!

動物愛護の連中によるテロで被害で我が祖国がどんどん没落していく・・・

その気持ちが分かるか!!

何もかもフクロウが悪い！

テロの巻き添えで国家間に緊張が走りそれが原因で第三次世界大戦が起きた！

多くの人々が戦争に巻き込まれ数多の死傷者が出て来た

そうする内に世界を狂気が包み初め核すら容認された！

敵国から核ミサイルが撃ち込まれた時、我が祖国も報復で核ミサイルを放った

敵国は滅んだ・・・我が祖国と共に・・・うう・・・

何もかもフクロウが悪い！

荒廃した祖国で生き残りの物資の奪い合いで私の足は片方無くなってしまった！

私の子供は殺されてしまった！私の妻は連れ去られてしまった！

私は全てを奪われてしまったのだ！フクロウが居たせいで！

お前にその苦痛が理解出来るのか！？

何もかもフクロウが悪い！

何もかもフクロウが悪い

何もかもフクロウが悪い・・・

たがらフクロウよ、罪の償いとしてそこから降りて来い・・・

私に喰われるのだ、それがお前に出来る唯一の贖罪は

私の食事の食材になる事だけなのだ

頼む・・・もう腹が減って声も出ない・・・

フクロウは飛び去った

人類最後の男の叫びを無視して

男の言葉に意味は無く、フクロウにも意味は無い

男には罪は無く、フクロウにも罪は無い

男は人間でフクロウは梟だ

共に違う価値観で生きていて交わる事は決してない

それが悪い事でも無く良い事でも無い

それが自然なのだ

フクロウは人間が居ない空を今日も飛ぶのだ