第13話文明と戦争
あたしはケイト・ケチャップマン。
22歳に成る。田舎の農村から夜行列車に乗って出てきたの。
この大都市チョンゴン・シティに暮らして2年になるわ。
ファッション・デザイナーのアシスタントをしている。
ヒヨコの卵よ。
世界は破壊と略奪と殺戮で汚されている悪魔の時代なのに。
ここだけは誰もが自由と平和を謳歌しているわ。
この都市はまだ希望があふれている。
今は暇なのでスケッチ・ブックに描きためた、洋服のデザインの修正をしている。
ガチャンッ・ガチャガチャ・キイィ・バタンッ・ガッチャン
?「ふう、外はにわか雨が降っているわ」
「キツネの嫁入りと言うんですってね、太古の言い伝えでは」
「この都市は大気が汚れているから」
「天気がコロコロ変わるけど」
「タヌキはお嫁さんには成れないのかしらね」
ケイト「あら、ナナ早いわね。仕事熱心なあなたが早く帰るなんて」
この少女はナナ・ワンショット。20歳だそうよ。
あたしと一年前からルーム・シェアリングをしている同居人。
お互いあまり立ち入った事は聞かないようにしている。
ナナ「カンガルー軍が来たのよ」
「ここも戦場になるかもしれないわ・・・」
ケイト「まさか、ナナの考えすぎよ」
ナナとは老舗の庶民派レストラン。
「ぐるぐるホーキ星2号店」で知り合った。あれは奇跡ね。
ナナが座っている席だけオーラが出ていたの。
その時はナナは黒髪のロング・ストレートの髪だったけど。
今はウエイトレスの仕事柄でツインテールにしている。
あたしのスケッチ・ブックの良き理解者でもあるわ。
ケイト「ねえ、ナナ・・・」
「このスカートにはスリットを入れるべきだと思うの」
ナナ「うーん。これは左右非対称の切り込みを入れたらどう?」
あたしと波長は合うみたい。
ナナ「このカラーは薄い色からグラデーションさせていったら」
「個性的でビビットなセンスに成ると思うわ」
ケイト「さすが、ナナってサイケでヒップよね」
カチ・・ブウゥン
ニュースキャスター「・・・軍上層部では正式なコメントは出来ないと発言しています・・」
「両国の一部の政治家による和平交渉ですが」
「数ヶ月以内に正式な和平協定が結ばれる見通しが立った模様です」
「カンガルー同盟とペパーミント連邦国の戦争が開戦されてから」
「3年が過ぎようとしていますが」
「ようやく明るい希望が見えてきた模様です」
ケイト「ナナ、毎日ニュースで戦争の情報を見ているけど」
「ううん。聞かないほうが良いわね」
ナナ「・・・・・」
「私の故郷がペパーミント連邦軍に占領されているのよ」
「だから終戦の日を待ち続けているの」
ケイト「あたしには、ナナは非凡な人に見えるわ」
「タダ者じゃないような・・・」
ナナ「ケイト。平凡な人なんてこの世には居ないのよ?」
「誰だって非凡な自分なのだから・・・」
ケイト「・・・・・」
ナナ「あ、スコールが来たわよ、ケイト」
「洗濯物が出しっぱなしよ?」
ケイト「わ、いっけない!ナナっ。手伝ってくれる?」
ナナ「ええ!」
夜中、同じ部屋で並んだ二つのベッドで眠るあたしとナナ。
部屋は暗闇。
ナナ「ねえ、ケイト・・・」
ケイト「何?」
ナナ「世界中がこんなふうに平和だったら良いのにね」
ケイト「うん・・・」
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