俺に「こんな」妹は必要ない!

コヨミ

第1話 俺にプロローグは必要ない!

「あなたには大切な人がいますか?そしてあなたはその人を大切にする事はできていますか?」


 過去の俺に会えるのならば、俺はそう伝えたい。

 ……………………………………………………

 俺の名前はさざなみ 優牙ゆうが。都会寄りの田舎(つまり田舎)に住んでいるごく普通の高校一年生だ。といってもついこの間中学を卒業したばかりで、高校生とは言えないが。もう少し深く自己紹介をしていこう。

 俺には友達がいない。唐突にコミュ症アピールをして申し訳ない。しかし、こうなってしまったのには幾つか理由がある。一つは生まれつき目付きが悪く周りに人が寄り付かなかったという事だ。もう一つは、俺がまだ小さかった頃の話だが、俺はある事情で古くさい遊びばかりしていた。その為、現代のブームに着いていく事が出来ず、友達も自ずと出来なかったのだ。しかし、俺も短所しか無いという訳では無い。俺にも唯一の長所ぐらいは有る!それは、優牙っていう名前がカッコイイという事だ!


『オメェーの長所じゃねーじゃん(笑)』

「なっ!」


 い、言っておくぞ。俺の親は俺の名前を付けた時に、優し過ぎないように、ある程度は牙も出しつつ、優しくかつ強く育って欲しいという思いから、「優牙」と付けたられたんだ。だ、だからな…


『目付きが悪いオメェを見た他人からしたら、牙剥き出しにして悪事を働いているようにしか見えていなかったんだろうな(笑)』

「おい!そろそろ泣くぞ!マジで!」


 あ、あながち間違いじゃないのがまた憎たらしい。んーまあ、釈然としないが長所は無いという事にしておこう。

 ちなみにさっきからちょくちょく俺の話に水を差してくるコイツは、俺の心の中に潜むイジメの悪魔だ。俺は「師匠」とか勝手に名前を付けているが…この話はおいおい話していこうと思う。


 という話は置いておいて、俺は人に慕われない寂しさがあったのか、ある悲しい過去によって一昔前まではやんちゃで…いや、やんちゃなんて可愛いものではない。学校に一人はいる虐めっ子だった。それも相当面倒くさい。

 果たして、そんな虐めっ子生活が吉と出るのか凶と出るのか…どんな出会いが待っているのか…。そんな俺の過去のエピソードを語っていこうと思う。俺の無碍な過去をどうか最後まで聞いて貰えると有難い。


 時は遡ること七年前…


「ハッピバースデイートゥーユーハッピバースデイートゥーユー…」


 今日は僕の八歳の誕生日。僕にとっては一年で一番楽しい日だ。それもそうで、お父さんは毎日出張で忙しく、お母さんは仕事の都合で夜遅くに帰宅する。だから大抵いつもは隣のお婆ちゃんに面倒を見てもらっていた。そんな訳で、この日だけはお父さんとお母さんの笑顔を見ることができる唯一の日だった。


「ゆー君また大きくなったんじゃない?」

「お母さんいっつも同じことばっかりー」

「あら、そうだった?でもね、お母さん本当に嬉しんだよ。」


 そんなくだらない会話を繰り返し言っているこの空間が僕にとっては宝物の様にすら感じていた。だから僕はこの日を毎年楽しみしていたのだ。この日までは。


 この時、既に不幸のスパイラルが目の前まで迫っていようとは思ってもみなかった。

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