キツネとハンカチ

倉谷みこと

第1話 上機嫌なキツネ

 赤や黄に色づいた葉に優しい日射しがあたり、森を鮮やかに彩っていく。


 その中を一匹のキツネが鼻歌を歌いながら歩いていた。その首もとには、ピンク色のかわいらしいハンカチがスカーフのように巻かれている。


「やあ、キツネさん。上機嫌だね。いいことでもあったのかい?」


 どんぐりを集めていたリスが、キツネに気づいて声をかけてきた。


「あ、リスさん。実は昨日、人間の女の子からこれをもらったんだ」


 キツネは、自慢げに首もとのハンカチを見せる。


「何だい、それ? 見たことないものだけど」


「ハンカチって言うんだって」


 使い方はよくわからないけれどと、キツネはつけ加えて言った。


 どんぐりを切り株の根もとに置いたリスは、それによじ登ってふちに座ると、


「さっき、人間からもらったって言ったよな? その話、もう少し詳しく聞かせてくれよ」


 と、目を輝かせてキツネに告げる。


 リスはこの森から出たことがないので、森の外のできごとに興味があるのだろう。


 大きくうなずいたキツネは、切り株の隣に座ると思い出しながら話し出した――。

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