第8話

【すみいりすみいろ】


それは、どす黒い

渦巻き、奪い、思考の海を、深い底から覆し

心のうちに、疾く重く、楔のように食い込んだ

嫉妬、劣等、羨望、否定

自問自答と、堂々巡り

その果て、一体何がある

深淵、虚像、浅瀬、虚無

なにもない

なにも、ない

思考は飽くまで無駄であり、精神の整理であり、現実からの逃避の一環であり、臆病な己の防衛本能。

ちっぽけな虚栄心と、一握の矜恃

ひとをひとたらしめる要素を、ほんの少しでも守る為の殻

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