発明家シスターと届かないメール

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発明家シスターと届かないメール

「姉さん、ちょっといいかな?」

「ん? どしたね、我が弟よ」

「ちょっとスマホがおかしくてさ、見てほしいんだ」

「ん、貸してみ。で、どうおかしいの?」

「メールが届かないんだ」

「メール? ふむふむ。これはこっちじゃなくて向こうさんかもしれんよ?」

「向こう?」

「受信者側。ちょっくらパソコンで調べてみっから、ちょい待ち」

「どう?」

「これだな。相手のキャリア……携帯電話会社で通信障害が起きてるっぽい」

「直るの?」

「こればっかりは会社側で何とかしてもらうしかないんだがね。あー、現在調査中、復旧未定」

「えっ、てことは?」

「一時間後に直るかもしれんし明後日になっても直らんかもしれん」

「それは困るなぁ」

「急ぎの用なのかね、弟よ?」

「いや、明日一緒に遊びに行くんだけど、待ち合わせの時間も場所も決めてなくって」

「そうか。その友人くん、メッセージアプリとかSNSは?」

「彼はガラケーなんだ」

「ほう。いまどきガラケーの若者。珍しいねぇ」

「どうしよう?」

「ケータイは無理にしても自宅に電話すればつながるのでは?」

「自宅の番号しらない」

「今から会いにいくっても終電ギリギリだしなぁ。んー、そうか。よし、お姉ちゃんにまかせなさい!」

「え! 何か策があるの?」

「おうともよ! 我が発明品にこういうとき役に立ちそうなのが……どこやったかな」

「姉さんの発明? それ大丈夫なやつ?」

「なんだその疑いの目は!」

「だって姉さんの発明ってへんなのが多いから」

「へんなのとは失礼な。おお、あったぞこれだ!」

「とり?」

「『伝書バトくんいちごう』だ。」

「伝書バト?」

「うむ。機能はまんま伝書バト。行き先の住所をインプットして手紙を持たせれば届けてくれる。しかも、防水で雨の日でも大丈夫!」

「なるほど」

「さらに! GPSで位置情報を捕捉でき、相手が希望すれば返信メッセージを持たせることもできるスグレモノ!」

「すごい! のか?」

「いやすごいだろ? すごいじゃん! では早速これに住所をインプットして――ダメだ」

「え? なにが?」

「いやーそのー……ハトは夜行性じゃないから、夜は飛べない」

「へ?」

「ハトは夜目が利かないし、夜は寝るから、コイツは使えない」

「なんでそこ忠実に再現しちゃった? いいじゃんロボットなんだから!」

「なにごとにもリアリティは大事なのだよ。……大事なのだよ」

「はぁ。ふりだしに戻っちゃったな」

「そんなことはないぞ弟よ! こういうときのために切り札がある!」

「……」

「じゃじゃーん! 『伝書フクロウくんいちごう』だー!」

「伝書……フクロウ?」

「そう! フクロウなら夜行性だし、夜目も利くから大丈夫!」

「昼と夜で分けた意味は?」

「リアリティ!」

「……」

「……リアリティ」

「はいはい、じゃあとにかくそれ飛ばしてよ」

「うむ。では住所を入力してくれ」

「えーと……」

「――よし! じゃあ飛ばすぞ。窓解放! 充電満タンよーし! 住所インプットよーし! 手紙よーし! いけ!」

「よかった。これで明日待ち合わせができそうだ」

「うむ。よかったな弟よ。あとは念のためGPSで追跡して、と。ん? なあ弟よ」

「なに?」

「その友人、ガラケーといったな」

「うん」

「パソコンも持ってないのか?」

「いや? よく一緒にオンラインゲームしてるけど?」

「じゃあ、パソコンのアドレスにメールすればよかったのでは?」

「あ……」

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