フクロウの道しるべ
ふたまる
第1話
昔、あるところに1人の狩人がいました。狩人は入ったら出ることが困難だと言われている迷いの森に小屋を作りそこで住んでいました。
なぜ迷いの森と呼ばれているのか。単に道に迷いやすいのもありますが、もっとも難敵とされているのが不定期に発生する濃霧です。そんな危険な場所には、珍しい動物がたくさんいて、本来なら捕獲などが禁止されているが狩人はその動物達を捕まえて金儲けをしたくて森に住み着いていました。
しかし狩人自身も道に迷ってしまえば本末転倒、目印をつけていろんなところを調べて周り、一部分を把握。まだ未開の奥へと進むことは難しいけれど、それよりも手前、更には森から出る事すら容易になりました。
こうして珍しい動物を捕獲しては街に出て売り、また森に引きこもり捕まえるという人生を歩んでいました。
ところがそんな狩人はある悩みを抱えていました。
それは道に迷った旅人が小屋に訪ねてくる事です。この小屋に来る前に二手に分かれる道があり、右に行けば奥へと進み、左へ行けば行き止まりで狩人の小屋があります。
そんな場所なので一晩泊まらせてくれだとか何か食料を頂けないかとか、もっとひどい時には外出中に迷い込んだと思われる旅人に食料やお金が盗まれた事件もありました。
こうした事から何か対策をしなくてはなりません。
そこで、分かれ道に矢印の看板を立てて迷わないようにしようという案を思いつきました。早速、街で必要な材料を調達して木材の看板を立てました。
これで安心して暮らせる。そう思った数日後の出来事。
小屋に若い男性が訪れてきたのです。矢印があって迷わないはずなのになぜなのか。尋ねてみると、
「看板? そんなもんはなかったよ。いや、もしかしたら霧が出てたから見落としていたのかもしれないね」
霧。窓の外を見ると確かに濃霧が発生している。もう少し分かりやすい目印の方がいいのではないだろうかと考えた狩人は、1度看板を撤廃しようとしました。しかし今は霧が出ていて危険なので翌朝、看板を撤廃するために男性と一緒に分かれ道に行きました。
すると狩人は目を疑った。そこにはボロボロに切り倒された看板が無造作に地面に転がっていました。
いったい誰がこんなことを。ひっかいた跡が見られるので動物の仕業だと確信した狩人。
旅人の男性と別れた後、もう1度看板を作り同じ場所に立てて犯人を捕まえるため常に草陰に隠れて見張っていました。そして数日後、その犯人は突如として現れました。
大空を舞う丸くぽっちゃりな体形。厳つい顔というよりかは鋭い目つきで誇らしげな顔。
森を飛び回り悠々とした姿は間違えるはずもない。フクロウだ。
フクロウは鋭い爪を用いて思いっきり上空から看板めがけて切りつけた。衝撃のあまり、以前見たのと同様に無造作に看板は地面を転がった。
狩人はすぐさま麻酔銃を取り出し1発撃ち込む。長年いろんな動物を捕まえてきた狩人にとっては、森の中で飛び回るフクロウはもはや止まっているに等しい。
早速捕獲した犯人を小屋に持ち帰り、どう処置するか考え始める。
普通に売るか。焼いて食べるか。見張りとして置いとくか。そう考えている時だった。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
どこからか声が聞こえた。しかしその場にいるのは狩人とフクロウのみ。まさかと思いフクロウの方を見ると、
「ごめんなさい。食べないでください」
「うわっ、しゃべった。」
なんと驚いたことにフクロウの口が人間のようにパクパク動かししゃべりだしたのだ。
「お、お前。何者だ!!」
「驚かしてすみません。実はわたしは他の動物と違って人間の声を話すことが出来るとても珍しいフクロウなのです」
確かにこの森では珍しい動物は沢山いるが、しゃべる動物は空想上にしか存在しないものだと思っていた。狩人にとっては衝撃的な事実。
もし売ったら億万長者になれるかもしれないと考えていると、
「私はおいしくもないですし、売ってもそんなに儲かりません。ただ、1つだけ貴方のお役に立てることがあります」
狩人が悪い事を考えていると感知したのか、慌てている様子。
「お役に立てることってなんだ?」
「私が看板の代わりに分かれ道を旅人に案内するというのはどうでしょう。霧が出ようが夜になろうがわたし自身が声を掛けて誘導いたします。」
「人前で話してもいいのか?」
「まさか本当にしゃべっているとは思わないので、ロボットとか言っておけば信じるでしょう」
しばらく悩んだ末、他に当てを思い付けるのも面倒と考えて提案を承諾した。
ただし誘導以外にも手助けが必要になったら協力する事。もし逆らったら焼いて食べるという条件の追加の元、フクロウを家来につけた狩人だった。
結果的に小屋に旅人は一切来なくなり、安心して暮らすことが出来るようになりました。
そして月日が経ち、冬の寒さが増すある日のこと。暖炉で暖まり読書をしていると、外から何かの破裂音が聞こえた。
危機感を覚えた狩人は銃を片手にドアを開ける。するとフクロウが慌ててこっちへ来る。
「大変です!こちらに銃を持った人間が数人来ています。おそらく狩人様の噂を聞き付けた何者かがお金を盗みに来たのではないでしょうか?」
すぐ先にこちらに向かってくる5人組が見える。ひとまず威嚇射撃をする。しかし全く動じない者たちは、今度は取り巻きの中心にいる女性が発砲。狩人が持つ銃に命中してその衝撃で尻もちをつく。
それに続き、ほかの4人を銃を連射。
「狩人様。このままではまずいです。いったん非難しましょう」
そういって森の奥へと飛んでいきました。やむを得ず狩人も続いて道なき道の草木をかき分けて奥に逃げていきました。
「はぁはぁ。ここまでくればもう安心です。」
安堵している様子のフクロウに苛立つ狩人。
「なぜもっと早く教えてくれなかったんだ。」
「申し訳ございません。わたしも逃げるのが精いっぱいでしたので」
一度落ち着きあたりを見渡す。見覚えのない木々たちが立ち並ぶのを見ると不安に駆られる。森の奥へと足を運んだことのない狩人にとってはここが今どこだか知るすべはない。今戻っては危険極まりないので、ひとまず外へ出ようと歩き始めようとした時、フクロウが話しかけてきました。
「……なんだ」
「もし迷っているのでしたら私がご案内しますよ」
「まさか、外に出られるのか」
「はい。この森は私の庭みたいなものですので」
これで無事に帰れると今度は狩人が安堵する。フクロウが先頭に飛び、その後ろをついていく。
しばらく進んでいると、急にフクロウは木にとまりだした。なぜ止まるのか聞くと、目の前に怪我しているキツネが居るという。
確かに親子キツネが岩に背を向け弱っている。
「お願い狩人様。あのキツネ親子を助けてください。」
とは言われても何も施しようがない。
「いいよ。こういう生き物は自力で治そうとするからほっておいても大丈夫」
「ではせめて街で手当てをするのは」
「だから問題ないって。それより日が暮れないうちに出よう」
それに従い、フクロウは飛び始めた。
それからまたしばらく経ったころ、再び木に体を預けるフクロウ。
その目線の先には、1体のシカの角が枝に引っかかっていて動けない状況に陥っていた。
「お願い狩人様。あのシカを助けてください」
「なんでそんなことをしなくてはいけないんだ。俺だって歩き疲れて助けてもらいたいぐらいなのに。お前はとっとと外に案内してくれればそれでいいんだよ」
それに従い、フクロウは飛び始めた。
そしてついに日が沈み夜になったので周りが見えずらくなりました。おまけに真冬なので全身が凍えるような寒さが身体に襲い掛かる。さらに追い打ちをかけるかのように濃霧が出てきた。
「おい霧が出てきたじゃねえか。まだ着かないのか?」
「もうじきですよ。……あ!見えてきました。」
そういうと勢いよく羽ばたきだして行ってしまった。あっという間に霧に隠れてフクロウがどこに行ったのかがわからなくなってしまいました。
「待てって。こっちは見えないんだぞ」
後を追うようにして駆け出した――その時。
何故か目の前に断崖絶壁の崖が立ちふさがっていて、それに気づかなかった狩人は崖から転落。
奇跡的に命は助かりましたが、思いっきり地面に叩きつけられて骨を何本か折れてしまいました。体を動かそうとしても痛くてそれどころじゃありません。
すると近くに何者かの気配を感じるので力を振り絞り顔を上げるとそこにはフクロウが空中に飛んでいました。
「なんだ、お前か。頼む助けてくれ。動けないんだ」
ところが首を横に振る。
「なんだよ。あんたが外に出れるからと行ったからこうなったんだろ」
「外? そんなとこなんて今日中にはたどり着けないよ。だってここは森の中心部。旅人だってこんな道外れの所、滅多に通らないさ」
「……まさか、お前、ハメたのか。俺を殺すために」
「半分正解で半分間違い」
フクロウは続けて話す。
「私はもともと貴方をこの状況にさせるためにわざと捕まり接触したの。何故なら貴方はこの森でたくさんの動物たちを捕らえて殺してきたから。だけど、私も悪ではないのでチャンスを与えるようにした。その方法が、貴方を森の奥へ誘い出して迷わせる。その帰り道に困っている動物を助けるのかどうかを見させたわ。結果、助けなかった」
狩人は必死に弁解をしていたが、しまいには痛さと寒さで意識がもうろうとしてくる。
「私は単に汚れた道を行く貴方に正しい道を行く手助けをしました。ところが貴方はどうでしょうか。自分のことばかり考えて動物たちのことを考えていますか?」
「つぎ……から、ちゃんと……するから。……だからぁ」
「もう手遅れです。私が示した道しるべを拒否したということがどういうことが、その身をもって感じてください」
そう言い終わると、どこかへ飛んで行っていしまった。
1人取り残された狩人。その心には後悔と未練が残されたまま意識を失ったのでした。
フクロウの道しるべ ふたまる @Takuyomu0226
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