鳥獣忍者飯豊

ムネミツ

鳥獣忍者飯豊

 「泥沼党どろぬまとうの妖怪忍者、俺が相手だ! 変・身っ!」

 森野守夜もりの・もりやは懐からフエッスル型の忍具、梟笛きょうてきを吹き鳴らす事で己の中に仕組まれた忍法・鳥獣疑我にんぽう・ちょうじゅうぎがを発動させる。


 ホ~ッ!ホ~ッ!

 フクロウの鳴き声のような笛の根と共に、何処からともなく大量の木の葉を乗せた風が吹き荒れ守夜を包み込む!


 吹き荒れる風に泥田坊は嫌な予感を感じ、手が出せなかった。


 風が止むと、フクロウを模した頭部を持ち全身を木の葉の甲冑で覆った一人の異形の戦士が立っていた。


 守夜がフクロウの力を持つ戦士、鳥獣忍者飯豊ちょうじゅうにんじゃ・いいとよへと変身した姿だ!

 「出たな、鳥獣忍者め! この泥田坊どろたぼう様があの世へ送ってくれる!」

 泥が人間の形をした怪人、妖怪忍者泥田坊がポタポタと泥を垂らしながら叫ぶ。


 いざ、勝負の時!


 事の起こりは先日、町で起こる不可解な液状化現象による倒壊事故だった。

 「……ふむ、これはもしかすると泥沼党の仕業かもしれんな」

 守夜の祖父にして師匠、先代の鳥獣忍者飯豊である森野梟兵衛もりの・きょうべえが自宅の仏間で新聞を見て呟く。 

 つるっぱげだが精悍な顔つきのこの老人、戦士としていまだ衰えていない古強者である。


 「祖父ちゃん、この倒壊したスーパーの場所って元は畑だった所じゃね? 畑と妖怪で液状化か……もしかして敵は、泥田坊?」

 祖父から教わった妖怪の知識から犯人を推理する守夜。

 「おそらくそれが正解じゃろう、敵の次の狙いは郊外のガソリンスタンドじゃ。

心してかかるのだぞ」

 敵の次の狙いを予測する梟兵衛。

 「わかったよ祖父ちゃん、父さんと母さんも見守ってくれよな」

 祖父に頷き、仏壇に手を合わせる守夜。


 そして今日、学校帰りに目星をつけていた元は農家だったガソリンスタンドへ向かう守夜。

だが一足遅く大地が揺れ、ガソリンスタンドは倒壊してしまう。

 「くそ、間に合わなかったか!」

 悔しがる守夜、そんな彼に超高速で泥の弾丸が飛んでくる!

 「危ね! 誰だ!」

 間一髪弾丸を避けた守夜、弾丸が放たれた方向には怪しい僧侶が立っていた。

 「ちい! 仕留め損ねたか、運の良い小僧め見逃してやる!」

 僧侶は泥が人の形をとった異形に姿を転じると、守夜からくるりと背を向け採石場の方へと走りさる。


 「見逃してやると言われて、はいそうですかと行くか!」

 僧侶を追いかける守夜、そして今に至る。


 「小僧、貴様が鳥獣忍者であったならば容赦せん! 沈めい!」

 泥田坊が大地に手を当てると地震が起こり、地面が陥没していく。

 だが、フクロウの忍者である飯豊は両腕を広げ木の葉の翼を出し空へと舞い上がる。

 「今度はこっちの番だ、喰らえ忍法・木の葉嵐!」

 飯豊が翼を羽ばたかせ、木の葉を乗せたつむじ風を巻き起こし泥田坊を無数の木の葉で切り刻む!

 「ぐわ~~~~~っ!」

 叫びを上げて姿を消す泥田坊、決着がついたか? いや、そんなはずはない。

泥田坊は己を泥に変え地中へと逃れたのだ!


 「奴が消えた? だが逃がしはしない!」

 飯豊は精神を集中させて耳を澄ませた、フクロウの力を得た彼の切り札の1枚目は

その聴力だ。

 泥田坊が地中を移動する音を聞き当て、次に奴が姿を現す場所へ無音で飛行し追跡する飯豊。

 切り札の2枚目、フクロウは音を立てずに空を飛べる。


 自身が追跡されているとは知らず、森の中で姿を現す泥田坊。

 「はっはっは、逃げ切って見せたわい♪」

 大木の下で足を止め安堵の笑いを上げた所で、泥田坊の首を背後から飯豊の両足が捕える!

 「逃げられると思うな。喰らえ必殺、梟絞め!」

 木の枝を支えに三角絞めの要領で泥田坊の首を容赦なく締め上げる飯豊、そして止めとばかりに体を捻り泥田坊の首をねじ切ったっ!

 「……妖怪忍者泥田坊、成敗っ!」

 泥田坊が霧散化して消滅するのを確認して、飯豊から守夜の姿へと戻る。


 こうして、悪の妖怪忍者泥田坊は成敗された。

 だが、泥沼党はまだ壊滅していない。

 戦え! 鳥獣忍者飯豊!

 フクロウの力が切り札だっ!

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鳥獣忍者飯豊 ムネミツ @yukinosita

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