飛べない、見えない、ふとっちょトリ
タカナシ
ふとっちょフクロウのゆうき!
ここはトリの国。
さまざまなトリが暮らす中、一羽のふっくらとしたトリがあっちへトットット。こっちへトットットと右へ左へ、木のお家にぶつかりながら、歩いています。
「おいおい。ふとってるから、木にぶつかるんだろっ。オレみたいに少しはやせろよ!」
スレンダーでカッコイイ、タカくんは心ない声を浴びせかけます。
ふっくらとしたトリは羽をちぢめて、小さく見えるようにがんばります。
「すがたがダサければワタシみたいに美しく飛べばいいじゃない」
颯爽と飛んできたツバメさんはまるで他人事のように言い放ってから、再び空へともどっていきます。
ふっくらとしたトリは、まるでだれが言ったのかわからないというようにキョロキョロとまわりをうかがいます。
「ムダだよ。こいつ目が見えないんだからw」
とっても目がいいワシくんはあざけ笑うように言いました。
ふっくらとしたトリは悲しくなりましたが、ギュッとクチバシをとじて耐えます。
3羽のトリたちは口をそろえて、
「飛べない、見えない、ふとっちょトリ」
バカにするように言います。
さすがにおこったふとっちょトリはふるえる声で言い返します。
「ぼ、ぼくだって目が見えるときもあるし、空も飛べるもんっ! ……からだはふとってるけど」
「おいおい。飛べない、見えない、ふとっちょトリにウソツキまで増えたぞ!」
タカくんたち3羽は悪口を言いながら飛び去っていきました。
「ほんとうだもん。ぼくだって……」
そう小さくつぶやくふとっちょトリの声を聞く1羽のトリがいました。
「ボクはキミの言うことを信じるよ!」
ふとっちょトリはそんなことを言ってくれるトリにはじめて出会いました。
どこにいるのか探そうとグルグルと首をまわします。
「ボクはここだよ」
小さくて冷たい羽がふとっちょトリのかおにふれる。
「ぼく、信じるなんてはじめて言われたよ。キミはだれ?」
「ボクはペンギン。飛べないトリだよ」
「ペンギン? でもキミは泳げるじゃないか」
「そうだね。でもボクもキミみたいに飛べないことをバカにされたことがあるんだ。だけどね。ボクはボクをあきらめなかったよ。だから飛べないことは気にしなくなったし、泳げることにホコリをもったら、まわりも認めてくれはじめたんだ」
ペンギンくんはしっかりと両方の羽でふっくらトリの顔をはさむと、
「じぶんでじぶんをあきらめちゃダメだよ。すくなくともボクはキミを信じてる。キミは飛べるし見えるんだろ。なら自信をもつんだ! フクロウ!」
フクロウは見えない目に涙をうかべて、ペンギンの言葉になんどもなんどもうなずきました。
※
その日の夜。トリの国に事件がおきました。
「おいおい、なんだ。なにがおきてるんだッ! いててっ」
タカくんは痛みのなか、羽をひろげてあばれます。
「大変。なにも見えないのに、なんなのよ!」
ツバメさんは自慢の羽を広げて、飛び立ちますが、夜のふかいふかいヤミのなか、木々にぶつかり、すぐに飛ぶのをあきらめます。
「ちょっ。イタタっ! なんだこいつら!」
ワシくんはいっしょうけんめいになにがきているのか見ようとしますが、なにかがいることしかわかりません。
そのなにかはいっぱいいて、つぎつぎにトリたちをおそっていきます。
木の家でやすんでいたフクロウはさわぎを聞きつけ、外のこうけいを見ます。
「あ、あれはネズミ? いつもタカくんたちがたおしているのに、なんで?」
フクロウはじぶんが見えていることにも気づかず、みんながおそわれているようすにおびえて身をちぢめます。
ネズミたちはヤミのなか、トリたちにカミついたり、ひっかいたりします。
ネズミたちはドンドンすすみ。とうとうペンギンの家のまえまでやってきました。
「なんで、みんないないの?」
だれかを頼ろうとおもったフクロウは、目をそらして、だれかが助けてくれるのをいのります。
そのとき、ツバメさんの声が聞こえました。
「ワタシたち、なにも見えないの。だれか、たすけて」
その言葉でフクロウはいま、じぶんが外のせかいを見えていることに気づきます。
「も、もしかして、どうにかできるのは、ぼくだけ? どどど、どうしよう」
こわくてふるえていると、フクロウはペンギンの言葉をおもいだします。
――じぶんでじぶんをあきらめちゃダメだよ。
フクロウはブンブンと顔をふります。
「ぼくはぼくを信じてくれたペンギンをたすけたい!」
そうおもった瞬間、フクロウは飛び出していました。
大きな羽を広げ、ヤミをきりさくように飛び回ります。
そして、ペンギンにカミつこうとしているネズミをケリとばします。
「ぺ、ペンギンくんに手は出させないよ!」
声はふるえて、けっしてカッコイイとは言えない姿でしたが、ヤミのなかならぜったいに勝てるとおもっていたネズミたちに衝撃をあたえるにはじゅうぶんでした。
「チュチュ。なんだこのトリ。ヤミのなかでも見えるのか?」
フクロウは大きく羽を広げる。
「み、みんなはぼくが守るんだ。おまえらは、ここから出てけッ!」
「チュ~!! こんな切り札がいるなんてきいていないぜッ!!」
ネズミたちは、いっせいに逃げ出しました。
こうして、トリの国にふたたび平和がおとずれました。
そして、この事件で、フクロウはみんなにバカにされることはなくなり、ペンギンとはいっしょうのトモダチになりました。
(了)
飛べない、見えない、ふとっちょトリ タカナシ @takanashi30
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます