第12話「3月20日」
昔々たいそう綺麗なお妃さまとそれはそれは立派な王様がいました。王様とお妃さまにはとても美しい娘がおり、その肌は雪のように白く透明だったので「白雪姫」と
名付けました。白雪姫とお妃様は姉妹のように仲が良く、王様は二人が遊んでいる
ところを見てほほえましく思っていました。
しかしある夜、しわがれたおばあさんのようなひとがお妃さまのところを訪れ、
こんな話を持ち掛けました。
「お妃さま、お妃様。私は旅の行商人です。どうかこちらを買い取ってはもらえませんでしょうか」
そうして出てきたのはお妃様よりも大きな鏡でした。しかしその鏡には何も映って
おらず、目の前にいるはずのおばあさんやお妃様の姿すら見えなかったのです。
不思議に思ったお妃様はおばあさんに尋ねました。
「この鏡には何も映ってないわ」
「この鏡は真実を映す鏡です。この鏡に質問すれば本当のことを答えてくれる
でしょう」
面白いと思ったお妃様は実際に試してみました。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだれ」
すると真っ暗で何も映っていなかった鏡の中に次第に像が出来上がっていき、完成
した像はお妃様そっくりでありました。
「いかがでしょう。この世で一番美しいのはお妃様、あなたであると真実の鏡は
答えてくれました。貴方様の娘よりもやはりあなたこそがいちばんの」
お妃様は黙って鏡に拳を突き立てました。あっけにとられたおばあさんを横目に鏡は綺麗に罅を描いて砕け散ってしまいました。
「おお、なんてことを。貴方様は一体どうしてしまったのですか」
お妃様は静かに答えました。
「この鏡がうそつきだったからよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます