第10話「3月18日」日付越えたことを忘れてた

校舎の屋上で付き合い始めたカップルは幸せになれるらしい。

恐らく何の根拠もないうわさが流れているそんな場所に、私は茜色にまみれて立っている。そろそろ赤とんぼが流れ始める頃合いだろう。その音楽に合わせて小学生たちは家に帰り始めるはずだ。そうしてもうすぐいなくなる。誰も彼も。

私でさえも。

始まりも終わりも全てここだった。憧れの先輩に思い切って告白し、付き合い始めた私をひがんでいじめが始まり、先輩が顔も知らない女と共に私の前から消えて

いった。彼と別れた最後の場所も、ここだった。

バツが悪そうな先輩と勝ち誇った顔をしたあったことがない女の先輩。バカみたいな言い訳と別れを告げ、屋上から二人は去っていった。

やはりうわさなどあてにもならない。私に幸せは早すぎた。彼と同じようなバカみたいな言い訳が胸中を駆け巡る。

ガシャン、フェンスに足をかけた。ガシャン、もう一方の足もフェンスにかけた。

無感情なロボットのように規則正しくガシャンガシャンと音を鳴らしながらフェンスを乗り越え、ついに屋上のへりに足を乗せた。

そこから見る足元の景色は、いつもと同じ、いつも見ている学校の風景のはずなのに

見方を変えるとこれだけ寂しくなるなんて、奇妙な感じがした。それとも景色が

誘っているのだろうか。寂しい、寂しいと。

足元を通り抜ける風が少しだけ寂しさを紛らわせているようだった。

ここに幸せはなかった。あちらにはあるだろうか。

幸せを探し求めて、私は宙に舞った。

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