第3話
「……兄さん」
「なっ、何?」
「この状況は……予測していましたか?」
「えぇ……と」
車を出てすぐに目の前で待ち構え、俺たちに寄ってきたのは、数人の男女。
しかも、全員が全員パンツスタイルのスーツだ。仕事や就職活動などでパンツスタイルのスーツの人たちを映像では見た事があるが、こんな森の中で見るのは初めてだ。
それに、この人たちがデザイン差が多少あればまだ良かった。
しかし、どうにも全員が全員同じ服装をしている。それはどうしてか……という問いに、俺はすぐに答えを出した。
要するに、この人たちは母さんの実家の関係者だという事なのだろう。
それはつまり、俺たちがどうしてここにいるのか……という理由も相手方にはつつ抜け……という事を意味している。
ただ、そうなると……一体どこまでバレているのだろうか。
下手をすると、別行動をしている刹那たちにも危害が及んでしまう可能性も十二分に考えられる。
「とっ、とりあえず……にっ、逃げよう」
「えぇ」
俺は兄さんの言葉にたじろぎながらも、仕方なく走り出した兄さんのすぐ後ろについて走っていった。
■ ■ ■ ■ ■
「はぁはぁ」
「はぁ、兄さん」
「ん?」
「まさか、ああいう事になるって思っていなかったんですか?」
「いや、思っていたよ。考えていたよ。でもさ……」
「まさか待ち構えているとは思っていなかった……と」
俺の言葉を聞くと、兄さんは「あれはさすがに怖いって」と呟いた。
でもまぁ、確かにあのパンツスタイルかつ黒スーツの男女が突然俺たちに向かって来た……あの状況は、かなり怖かった。
「……で、どうするんですか。このままじゃ近づく事すら出来ませんよ」
「うっ、うん。あっ……でも、確かここなら……」
兄さんは突然そう言って、辺りをキョロキョロと見渡し……。
「あっ、あった。瞬、しゅん」
「はい?」
俺が近寄ると、兄さんは地面に緑のコケが生えている『扉』を開けて手招きした。
「なっ、なんですか。コレ」
「隠し扉」
兄さんはサラッと俺にそう言った。
「…………」
俺としては「いやいや、隠し扉があるなら最初からそっちに行けば良かったんじゃ……」と思った。
しかし、もしかしたらコレは『最終手段』なのかも知れない……とそれを思うと、あまり兄さんを深く追求することも出来ない。
それに時間もない。
「聡君がね。もしかしたら、本邸の方は守りが強化されていて近づく事すら出来ないかも知れないから念のために……って、教えてくれたんだ」
「そうですか」
俺は一瞬ためらった。
しかし、時間もあまりない上に、他に方法がなさそうだと思い、俺は兄さんの後に続いてその扉の下にある階段に手と足をかけ、降りていった――。
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