第2話
刹那と龍紀。千鶴は宗玄さんが運転する車に乗り、目的地の孤児院よりも少し離れたところで、宗玄さんは車を止めた。
「よーし、とうちゃーくっと」
そう言って、すぐに車から降りようとする刹那を龍紀は「ちょっと待て」と刹那が着ている服のフードを掴んだ。
「うぇ、何するんだよ。龍紀」
刹那はそう言いながら服装を整え、首の部分をさすっていたが、特に怒っている様子もなく、そう尋ねた。
「今の内に段取りを確認した方がいい」
「えー、そんなの行動しながらでいいんじゃないの?」
龍紀の言葉に、刹那は口を尖らせた。
「たっ、確かに行動を始めてから臨機応変に変更するのは必要だと思います。でも、ある程度は決めた状態で行った方がいいかと……思います」
しかし、千鶴にまでこう言われては刹那もそこまで強くは否定出来ない。
「うーん、でも早く行動を始めた方がいいと思うんだけど」
「それに関しては俺も同意する。だが、考えなしに突っ込んで行ってはただの自滅になりかねないという話だ」
「そっ、それにここは『孤児院』なので、全員が全員この話に関わっているか……と言われると、正直……」
そう、ここはそもそも『孤児院』だ。つまり、ここには子供たちがいる可能性が非常に高い。
そんな中に見知らぬ人が突然現れ、孤児院内に入ってきたら……小さい子供は泣いてしまうかも知れない。
そうなればトラウマ確実だ。
「うーん。でも、段取りって言ってもどうする? ここには孤児院として使っているであろう教会と……って、俺。この教会初めて見るんだけど」
「それに関しては俺もだ。こんなところに教会なんてあったんだな」
生まれも育ちもこの地域のはずなのだが、まさか少し離れたところにこんな建物があるなんて知らなかった。
ただ、この教会はかなり古くなっているのが外装から見て取れた。
「やっぱりここは、正面突破じゃない?」
刹那がそう言うと、龍紀は「はぁ……」と深いため息をついた。千鶴も、ため息こそつかなかったが「どうしよう」という表情で固まっている。
「あのな、さっきまでの話を聞いてどうして『正面突破』になるんだ」
「えー、だって忍び込むにしてもさ……」
なんて言いながら、二人は何やら言い合いを始めてしまった。
「どうやら、お二人はお二人になりに考えた結果を話していらっしゃるようですが……」
そんな二人を見かねたのか、宗玄さんが突然そう切り出してきた。
「今回は我が娘の『目』を使ってみてはどうでしょうか」
「え?」
「目……ですか?」
さっきまで言い争いをしていた二人は会話を止め、キョトンとした表情になった。それは、話題に出された千鶴本人もだった。
「はい。先ほども自分で言った通りどうやら娘は『霊』だけでなく色々なモノを見る事が出来る様です。そして、聡様から情報ではここに星川空様はいらっしゃいませんが、何やら重要な『仕掛け』があるそうなのです」
「なっ、なるほど。つまり、その『仕掛け』を見つけないと話にならない……と」
龍紀がそう尋ねると、宗玄さんは「はい」と肯定した。
「ふーん、じゃあその『仕掛け』を見つけて……どうするの?」
「壊して頂きたい……との事です」
「破壊しろ……か。ただ、それなら場所を考えないと……」
「いえ、先ほどから『仕掛け』と言いましたが、その『仕掛け』は何やら『図』の様なモノが書かれているので、それを消して頂きたいという事らしいのです」
「なるほどね。それなら、別に場所とか考えなくても良さそうだね」
「はい。それに、その『仕掛け』が『何かの力』によるモノならば、見つけられるかも知れません」
こうして、刹那たちの方針は決まったのだった。
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