星を紡ぐ少女

第7話

「もしかしたら、母さんはそもそもその『力』すら自分の家族に隠していた節がありそうだね」

「……かも知れませんね」

　この『力』とも呼べる代物は、人それぞれとは言え、使い方によって良くも悪くもなる。

　ただ、母さんの『それ』は……。

「忘れる……が、表立っているけど、実際は『書き換え』も出来るらしいって、聞いている。ただ、それもさっき言った『条件』つまり『枠の中』に当てはめる必要はあるけど」

「書き換え……という事は、爺さんの記憶も少し書き換えていれば、時間稼ぎにはなる……という事ですか」

「その可能性は十二分にあるね。何せ僕が生まれた後に瞬と『妹』が生まれているから」

「…………」

　この時、兄さんが『夢』の名前を出さなかったのは……ワザとだったのだろうか。それとも、名前を知らない二人に配慮した結果だったのだろうか……それは分からない。

「父さんの記憶も書き換えている可能性も否定出来ません。ただ、それが『いつ』とかいう事までは分かりませんが」

「うん、父さん。意外に抜けているところがあったからね。知らぬ間にポロッと言っちゃう可能性はあっただろうし」

　それに、父さんにしろ爺さんにしろ基本的に催し物にあまり参加するタイプではなかったものの、どうしても行かざる負えない時もある。

　母さんは、その時のために……と常時使っていたのかも知れない。

「なににしても、爺さんがどこまで母方の実家に話したかは知らない。ただ『不思議な力を持った孫がいる』くらいは言った可能性は否定出来ないんだよね」

「……もしかしたら、そこから話が漏れ出ていった……という可能性もある……と」

「まぁ、あくまで『可能性』の範疇（はんちゅう）を出ないだけどね。ただ、あの人たちの『狙い』は『母さんの能力』で、今回はご丁寧に反論出来ない状況作りまでされている……というワケだ」

「……厳しいですね」

「うん……」

「…………」

　相手方の目的は母さんの『記憶を操れる能力』だという事は、明確だ。その使い道までは分からないにしても、どうせ碌（ろく）でもない使い方をするのだろう。

　そう思ってしまうほど、母さんの実家……すなわち『本家』の人たちのやってきた事は、酷い。

「でも、これからどうすればいいのでしょうか？　実苑さんの言うとおり『精神的な攻撃』はないにしろ、今までの通りするワケにも……」

「……いや、今までの通り『カード集め』に専念して欲しい」

「え、でもそれじゃあ……」

　あの人たちの思い通りになってしまう事を懸念したのか、刹那は実苑さんの言葉に待ったをかけた。

「刹那の言っている事は分かる。でも、聡から聞いた話によると、今は儀式を一時的に中断しているという状況に過ぎない。つまり、この儀式に『中止』はない」

「それは……つまり？」

「つまり、全てのカードを集めないと話は進まない。成功……はたまた失敗……どちらになったとしても……ね。だから、まずはカードを集めるところから……って、言いたいんだけど」

「？？」

　なぜか、兄さんはそこで言葉を区切り、俯いた。